#1133
巻頭特集

記事を
ブックマークする

「スペインに住みたい!」息子たちの願いで‟バルセロナ移住”…大久保嘉人が明かす語学学校で‟猛勉強の日々”と大いなる目標「いま子供には言える。語学は絶対やっておけと」

2025/12/08
ワールドカップに2度出場した、かつてのストライカーがバルセロナに移住したのは今年4月。異境で語学学校に通う日々、何を思うのか。新たな道を生き、大いなる夢に挑む稀代の点取り屋を訪ねた。(原題:[スペイン定住ルポ]大久保嘉人「バスの喧騒に身を委ねて」)

 朝もやの奥にバスの音が聞こえる。

 バルセロナ行きのX95番の明かりが遠くから浮かびあがってくる。2kmほど先の地中海には朝陽がのぼりはじめたばかりで、簡素なバス停はまだ薄暗い。並んでいるのは通勤客に学生たち。車内は今日も混んでいるだろう。

 大久保嘉人は乗車券を手に、見慣れた車内へと乗り込んでいった。

 スペインへ移住してから8カ月がたった。大久保は現在、語学学校でスペイン語を学ぶ日々を過ごしている。自宅からバルセロナ市内の学校までは1時間ほどかかり、道が渋滞すれば、さらに15分ほど長い旅となる。

 車で通うこともできるけれど、あえてバス通学をするのは、自分が学生であることを肌で感じるためだ。

「朝7時に起きて、自宅からバスでバルセロナに向かってます。バスはいつも遅れるから、それも計算して乗って。通学する学生も多いし、ほとんど座れない。立ってるのは、マジできついですね」

 路線バスの中での日課がある。

 乗車券をリーダーにかざし、最適のポジションをおさえると、周囲に耳を傾ける。日本とは違い、スペインは公共交通機関の中にも言葉があふれている。くだらない話をする学生に、なにやら政治について語る中年の通勤客。もちろんバルサやレアル・マドリーについての議論が聞こえてくることも多い。

 生きた言葉が飛び交う空間は贅沢な学びの場だ。

「めっちゃありがたいですね。バスでもみんな話し続けているので。周りの会話をとにかく聞いて、分からない単語があればすぐに調べる。日本だと車内はしんとしているけど、スペインは会話がある。かなり助かります」

全ての写真を見る -1枚-
特製トートバッグ付き!

「雑誌+年額プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています

photograph by Daisuke Nakashima

0

0

0

この連載の記事を読む

もっと見る
関連
記事