黄金世代という甘美な響きには罠がある。
サッカー界において、これまで「黄金世代」と呼ばれた選手たちがA代表で栄冠を勝ち取ったことは一度もない。
ボバンやシュケルら擁するクロアチア代表は'98年W杯で3位になったが、それより上には行けなかった。ルイス・フィーゴやルイ・コスタ擁するポルトガル代表は自国開催の'04年EUROで決勝に到達したが、伏兵ギリシャに0対1で敗れた。
だが、謙虚さと勢いを併せ持つ今のベルギー代表ならば、この負のジンクスを覆せるかもしれない。
ケビン・デブライネとエデン・アザール(ともに'91年生まれ)、ティボウ・クルトワ('92年生まれ)、ロメル・ルカク('93年生まれ)らはベルギーの黄金世代と呼ばれ、'14年W杯でベスト8、'16年EUROでベスト8、'18年W杯で3位と着実に頂点に近づいて来た。ブックメーカー『bwin』は今回のEUROで、フランス、イングランドに次ぐ優勝候補にあげている。
心を閉ざした問題児として扱われていた
そのブックメーカーの予想で、キリアン・ムバッペとともに大会MVP候補の筆頭になっているのがデブライネだ。
昨季はアンリが持つプレミアリーグ最多アシスト記録に並び、リーグMVPを受賞。今季はマンチェスター・シティのリーグ優勝とCL決勝進出に貢献した。ベルギー人初のバロンドール受賞が見えてきた。
かつてデブライネはあまりにもシャイすぎ、心を閉ざした問題児として扱われていた。14歳のとき、下宿した家から「性格が暗すぎる。もう来ないで欲しい」と追い出された。23歳で発売した自伝では恋人が代表チームメートのクルトワと浮気したと暴露した。携帯のショートメッセージの返信があまりにドライなことから、友達から「乾燥機」と呼ばれていた。
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