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『わかっちゃいるけど、ギャンブル!』文豪が真摯に向き合った、豊かなギャンブルの世界。

2017/12/05

 よろず賭け事の行きつく先は負けゲームではないか。わかっちゃいるけど……。本書には、パチンコ、麻雀、カジノ、競馬、競輪などのジャンル別に38人の作家、著名人の蘊蓄、哲学、美学ありの悲喜こもごもエッセイが40篇も。好きなギャンブルからでも、関心ある人物からでも、順不同で読んで楽しめる。

 文壇の勝負師と言えば、『麻雀放浪記』の阿佐田哲也(朝だ、徹夜)こと色川武大。彼は2編が収められた。チンチロリンを取り上げ、勝利の「アベレージをあげるための基本」を事細かに説くが、「ツイているときだけやりなさい」と結論は身も蓋もない。もう1篇はギャンブルの中で「そのコク、味わい、読みのどれについても」群をぬく競輪への懇切丁寧な“入門案内”。こちらも「ここから先がそれぞれの研究範囲」と突き放す。博奕をなめるな、の教え。無頼の一生をおくり、短編集で文学賞を獲った異色の作家はギャンブルに真摯に向かい合っていた。その成果は名著、『うらおもて人生録』(新潮文庫)に結実した。

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photograph by Sports Graphic Number

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