昭和の古き良き相撲界を伝承する男が、またひとり去ってしまった。
横綱大鵬が遺した「大鵬道場」――大嶽部屋所属の「世話人」、元幕下筆頭の友鵬勝尊(ゆうほう・まさたか)だ(現役時代の四股名・勇鵬)。享年60。
世話人は相撲協会員であり、主に“ちゃんこの味の染みた”ベテラン幕下力士が、現役引退後に付く役職のひとつである。巡業各地での設営や本場所中の警備、「綱打ち」と呼ばれる横綱の綱作りも、世話人たちの手による。手掛ける仕事は多岐にわたり、まさに相撲界の“縁の下の力持ち”なのだ。
本場所中は、力士の入場門に常駐していた「門番」で、相撲界の中で知らぬ者はいなかった友鵬。若い力士に「挨拶の声が小さいぞ!」「ゆかたの着方がだらしない。帯はこう締めるんだよ」などと、沖縄・宮古島出身のおおらかな笑顔で声を掛け、角界の教育係のような存在だった。部屋が隣接し、年齢が近いこともあり、故・北の湖理事長の良き相談相手ともなっていた。
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photograph by Miki Fukano