世界タイトルを総なめにした19歳。その素顔は、どこまでも独特だ。
前人未踏の荒野を歩む若き王者が、激闘の先に追い求めるものを訊いた。
ソチ五輪での金メダル獲得から1カ月。日本開催の世界選手権でも優勝し、'13年12月のグランプリファイナルと合わせるとフィギュアスケートの世界3大タイトルを総なめにした羽生結弦。19歳で世界の頂点に立った若武者が心と頭脳の全貌をいま明かす。
五輪は、2つ前の試合で優勝したなあというだけ。
先に言っておきますが、五輪で金を獲ったからといって、僕の気持ちが変わる事はありません。五輪は、今の僕にとって単に2つ前の試合で優勝したなあというだけです。今年は今年。来年になれば、違う場所で、違う演技を、違うお客さんの前でするだけです。
3冠についても同じです。達成したから次に目指すものが無くなる訳ではありません。記録はあくまでも記録。僕は記録を残すより、自分自身が成長したいんです。現役を続けるということは、僕が競技者であり続けたいと思っているということ。そして競技者であるからには、もっと強くなって試合で戦いたいということです。
より強くなりたいと願う羽生。彼を今季ここまで成長させ、勝利へと導いたキーワードは、心との対話だった。前半のグランプリシリーズでは、最大のライバル、パトリック・チャン(カナダ)と3戦すべてで当たる奇遇な組み合わせに。それを生かし、ライバルの前で自分がどんな心理状態になり、どうしたら力を出せるかをシミュレーションした。
パトリックとの3試合は、心を理論でコントロールした。
パトリックとの3戦は、僕のスケート人生において濃縮された時間でした。もっと精神面で強くなろうと考え抜いて、色々なメンタルの本を読み、理論を学びました。それを自分の心に当てはめて、自分なりの気持ちの持って行き方を探し、試合をやり、また探す、というのを繰り返しました。自分の心を脳で理解することで、心を理論でコントロール出来るようにしたんです。
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