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<雑草魂、千葉ロッテの中軸に> 角中勝也 「七尾発、高知経由、首位打者行き」

2012/08/27
辺境に生まれ育ったばかりにプロまで遠回りを強いられた男が、
今季、バットマンとして目の覚めるような活躍を見せている。
朴訥の中に無骨を漂わす角中の、野球人生の原風景をたどった。

 感情表現が乏しい――。ロッテの角中勝也を知る人物は、みなそう口をそろえる。何を考えているか読めないですよ、と。

 独立リーグから這い上がるという異色の経歴を持つ角中は、6年目の今季、競争の激しいロッテの外野陣の一角に食い込んだ。

 5月12日。マリンスタジアムで行なわれたソフトバンク戦で、サヨナラ犠飛を放ったときのシーンが思い出される。角中は、一塁ベース付近でチームメイトにもみくちゃにされ、どう喜べばいいのかわからず困ったような表情を浮かべていた。試合後のヒーローインタビューなどでも、いわゆる「弾ける笑顔」といった顔は見かけたことはない。

 それだけにどんな取材になってしまうのか心配していたのだが、杞憂だった。決して雄弁ではないものの、決して無口というわけでもない。いや、スポーツ選手としては、むしろよくしゃべる方だ。

 ただし、話す内容は、やはり関係者が指摘した通りだった。

野球人生で泣いたのは一度、ガッツポーズしたのも二度だけ。

 角中はこれまで野球で一度しか泣いたことがないし、二度しかガッツポーズをしたことがないのだという。

「高校1年の夏は、確か、泣きました。でも3年のときは、まったく泣かなかった。やっと終わった、っていう感じで。最近いちばん泣きそうになるのは『ワンピース』を読んでるときですかね」

 ガッツポーズは、いずれも自然発生的なものではなく、あくまで「確信犯」だ。

「初めてやったのは高2のとき。打ったらみんなガッツポーズしてるんで、自分もやってみようかな、って。あとはマリン(スタジアム)で1回やりました。打ててないときだったので、清田(育宏)さんに『今度打ったら、こっそりやります』って言ってたんです。ただ、思わず出たってことはないですね」

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photograph by Masaru Tatsuki

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