チームの最後方で最後の砦となるゴールキーパーは、
最も直接にゲームの流れを左右する存在である。
元日本代表GKが、欧州の守護神たちを語り尽くす。
名優がきっちり舞台を引き締めた。
UEFAのテクニカルチームは、今大会のベストメンバーに3人のGKを選出している。カシージャス(スペイン)、ブッフォン(イタリア)、ノイアー(ドイツ)だ。異論を挟めない選考と言っていい。
では、彼らの何が凄かったのだろう。大会を象徴するような、まどろみとうつつを覚ますようなビッグセーブを連発したから? 答えはたぶん「NO」である。
「大会全体を通して言えるのは、ミスによる失点はほぼなかった」
「大会全体を通して言えるのは、GKの明らかなミスによる失点はほぼなかった。『これは止めなきゃいけない』というシュートは、誰もがしっかり止めている。失点はどれも、『これはしょうがないかな』というもの。無駄がなくて、確実性を追求している」
こう語るのは、楢崎正剛である。4度のワールドカップを経験し、J1歴代3位の出場数を誇る36歳の守護神は、優れたGKの条件に「スムーズさ」をあげた。
「チームによってやり方は色々で、GKの役割もひと括りにできないですが、全体をスムーズに動かしているかは気になります。キャッチングできないシュートを、どこに弾いているのか。キャッチしたあとのボールやバックパスを、どこへ、どのように、つないでいるのか。そういった判断が適切だと、ゲームにリズムを作ることができますから」
大ピンチに直面しても、淡々と処理するカシージャスの凄さ。
個人をフォーカスすると、楢崎もテクニカルチームと同じ3人をあげた。なかでも「いいなって思う」のがカシージャスである。
1981年5月20日、スペイン生まれ。'99年、レアル・マドリーでプロデビュー。A代表通算137試合は同国史上最多、100勝を収めている。
「若い頃とは変わってきたな、というのがまずあって。10代後半とか20代前半の彼は、“とにかくシュートストップは任せとけ”という感じだった。いまは総合的にバランスの取れたGKになっているんじゃないかな」
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