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<西武ドラ1ルーキーの成長物語> 十亀剣 「強気で目指すは“本格派”」

2012/04/12
プロ入り直後のオープン戦で才能を余すことなく見せつけたが、なかば約束されていたローテーション投手の座は、開幕直前に剥奪された。だが十亀は必ず一軍に戻ってくる。野球人生で常に這い上がってきた男だから。

 本当なら、12球団の新人で最も早く先発のマウンドに立つはずだった。

 愛工大名電高、日大、JR東日本を経て、ドラフト1位で西武に入団した十亀剣。オープン戦など対外試合で10イニング連続無失点に抑え、渡辺久信監督も一度は先発ローテーション入りを決断する。用意した初舞台は3月31日、開幕第2戦の日本ハム戦。事実上のエース武田勝と対決させる予定だったのだ。

 ところが、3月後半の2試合で6失点、5失点と大量失点を重ね、急転して開幕直前に二軍落ちである。自慢の真っ直ぐを狙い打ちされ、制球を乱してボールが先行、カウントを苦しくして痛打された結果だった。

 力んでいた。十亀自身もこう言っている。

「もともと力んでしまうことが学生時代からの課題でした。力まないほうがキレのある球がいくとわかってはいるんですけどね。そういうとき、1球で修正すること、気持ちをリセットすることがぼくの課題なんです」

 素質は申し分ない。横に振る腕が鞭のようにしなって、140km台後半の直球の威力、シンカーのように落ちるシュートの切れ味も抜群。サイドスローでこれほど力強いピッチングを見せる投手の出現は、巨人で「平成の大エース」と呼ばれた投手、通算180勝を記録した斎藤雅樹以来かもしれない。

「あんな投手はほかにいないと言われる存在になりたい」

「サイドで140km以上出せれば絶対にプロに行ける。あんな投手はほかにいないと言われる存在になりたい。高校時代から、ずっとそう思ってやってきました」

 その片鱗を見せたのが3月4日、3回を無安打無失点に抑えた巨人とのオープン戦だ。日大の先輩たちとの初対決では、長野に四球を与えたが、村田は遊ゴロに仕留めている。

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photograph by Toshiya Kondo

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