'70年代後半からの10数年間は、競馬場が土日を問わず人で溢れ、馬券を買うためにはそのたびに行列を覚悟しなければいけない時代だった。眺めがいいばかりではなく馬券も比較的ゆったりと購入できた指定席券は、文字通りのプラチナチケット。張り切って始発電車に飛び乗って競馬場に着いたとしても、徹夜組に先を越されて、いい席はすでに売り切れということも珍しくなかった。
いま思えば、それは競馬界にとって幸せな姿だった。しかし当時のJRAは「混雑解消」をファンサービスの緊急課題に掲げて知恵を絞った。その結果場外馬券売り場にウインズというお洒落なネーミングを施すなどしてファンの誘導につとめ、さらには電話やインターネットによる投票の普及を精力的に行なった。ずっとあとになってライブ観戦の楽しさをPRする戦略も付け加えたが、後の祭り。今では行列ができなくなり、競馬場にファンを呼び戻す難しさを嫌と言うほど味わっている。
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photograph by Hideharu Suga