幼少時から将来を嘱望され、ついにA代表で待望のゴールを決めた。
この華やかに見える半生の裏にある、知られざる試練の道を描く。
「俺、持ってないっすね」
ハーフナー・マイクが悔しそうに言葉を吐き出したのは、途中出場ながら代表デビューを果たした北朝鮮戦の後だった。絶好のシュートチャンスで放った一撃がバーに阻まれ、埼玉スタジアムの取材エリアで彼は何度も大きなため息をもらした。
しかし1カ月後、マイクは初先発したタジキスタン戦でその悔しさを晴らすことになる。圧倒的な高さから繰り出す強烈なヘディングシュートで2度、ゴールを突き刺した。
持ってましたね?
甲府が秋晴れに包まれた10月下旬。チーム練習を終えたマイクにそう水を向けると、彼はすぐに手を横に振る仕草をした。
「いや、逆にやっぱ持ってないと思いましたよ。前日にセットプレーの練習でスタメン組に入ってヘディングシュートを決めることができた。それなのに着地に失敗して足首を捻ってしまうんですから。医療スタッフが必死でケアしてくれたおかげで、当日は痛みが消えたんですけど、試合に使ってもらえるかどうかは分からなかった。これじゃあ持ってるとは言えなくないスか(笑)」
マイクが持っている「悔しさや逆境を糧とできる底力」。
“持っている、いない”は別として、はっきりと言えるのは、彼には悔しさや逆境を糧とできる底力があるということ。代表でも実証されたこの才能は、彼が辿ってきた道のりと深くかかわってくるのである。
マイクの父はJリーグの草創期に活躍した名GKハーフナー・ディドであり、母親も陸上七種競技の元オランダ王者という輝かしい経歴を誇る。
一流アスリートの血を受け継いだマイクは幼少時にボールを蹴り始め、ディドのコンサドーレ札幌GKコーチ就任と同時に札幌に一家で移り住んだ。身長が170cmに到達した小学校時代はスピードで鳴らすストライカーとして北海道では知られた存在となる。
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