欧州屈指の強豪クラブで並みいる猛者たちに囲まれ、
今、何を思うのか。19歳の前途をミュンヘンに追った。
「移籍って言うてもレンタルなんで。目標は完全移籍を勝ち取ること」
ドイツに渡航する直前、宇佐美貴史は、キッパリとそう言い切った。
――でもバイエルンでは、かつて稲本潤一がアーセナルで味わったような、まったく試合に出られないという状況に陥る可能性もある。
「……ありますね。ただ、どういう状況になっても腐らないで、努力を続けていこうと思ってます。ガンバでの1年目は、なかなか試合に出られんくてネガティブな気持ちにもなったけど、腐らずにやってきたから2年目につながったんやと思う。だから……心が折れない強さというか、今、何が自分に必要なんかと考えられることが、ドイツで生きていく上で肝になるんかなと思う」
――最初が肝心。
「間違いないっすね。シーズン後半は優勝争いとか厳しい戦いが続くんで、最初にどんだけ試合に出て、信頼を得られるか。もらったチャンスは逃さないようにしないと」
――やれる自信は?
「ないとやばいでしょ。何の不安もないし、ロッベンとかリベリーとか、レギュラーを食い散らかすぐらいの気持ちで行きますよ」
宇佐美は、まるで敵地に乗り込む戦士のような勇ましい口調でそう言い放ち、ミュンヘンへと旅立っていった。
バルセロナ戦では「唯一の光明」と現地メディアも高く評価。
バイエルンでの出足は、上々だった。
7月20日、リーガトータルカップのマインツ戦でスタメンデビューを果たすと、27日にはアウディカップ決勝のバルセロナ戦でフル出場を果たした。4-2-3-1の3の右MFとしてプレーし、ドリブルで仕掛け、MFアラバにスルーパスを出すなど、少ない機会ながらチャンスを演出した。そのプレーは、「負け試合のなかで唯一の光明」と、現地メディアに高く評された。宇佐美自身も「手ごたえは感じています」とコメントしたように、自分の持ち味を発揮し、技術的にも通用するという感触を得た。
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています