打つ今季。微塵の悲愴感も漂わせず、むしろ笑顔さえ浮かべながら、
最後の戦いを存分に満喫している。稀代のトライゲッターが、
ラストシーズンに懸ける思いを余すところなく語った。
「今シーズンで現役を引退します」
大畑大介がそう発表したのは、今季のトップリーグ開幕を控えた8月31日だった。
京都産業大学3年の1996年に初めて日本代表入り。初キャップの韓国戦で3トライのハットトリック・デビューを飾って以来、常に日本ラグビーのトップランナーとして走り続け、テストマッチ通算69トライの世界記録まで樹立。'07年には両足アキレス腱断裂、復帰した'08年度にも肩の骨折など、幾多のアクシデントに見舞われながら、そのたびに不屈の闘志で復活してきた。
35歳を迎えた今季も、プレーに衰えは見えない。本来のWTBからCTBにコンバートされ、ボールを持ってロングゲインする機会こそ減ったが、背番号13を背負ったフィニッシャーは連続タックルでピンチの芽を摘み、密集でのボール争奪に身体を張り、トライチャンスをセットアップする。序盤は一時12位に低迷しながら、1カ月のリーグ戦休止期間を挟む4連勝で5位まで復調(第8節終了時)した神戸製鋼にあって、今季で引退を公言している35歳は、驚異的なワークレートでチームを支えているのだ。
――突然の引退発表から3カ月経ちました。反響はいかがですか。
「リアクション大きいですよ。アキレス腱のケガから復帰したときや世界最多トライの記録を作ったときよりも、世間的なリアクションは大きいんじゃないかな。街を歩いてたり、ゴハンを食べてたりすると『引退決めたんやて?』とか『まだまだできるやん』とか、声をかけられますよ。発表した頃は、ほぼ毎日そんな調子でした。基本、声をかけられやすいキャラなんですね。中には、もう引退したと思ってる方もいたり(笑)」
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