W杯で一躍ヒーローとなった男は、周囲の喧騒をよそに
その活躍を振り返ることなく、ロシアへ発った。
なぜ、彼は未だすべてを封印しているのか。
8月上旬、巨大な煙に包まれた猛暑のモスクワで、
本田圭佑の大いなる“野望”と独自の“哲学”に迫った。
その活躍を振り返ることなく、ロシアへ発った。
なぜ、彼は未だすべてを封印しているのか。
8月上旬、巨大な煙に包まれた猛暑のモスクワで、
本田圭佑の大いなる“野望”と独自の“哲学”に迫った。
南アフリカW杯後、メディアから本田圭佑の「声」が消えた。
TVをつけても、新聞や雑誌をめくっても、本田がインタビューに答えている姿が一切見つけられないのだ。
W杯で活躍できず、戦犯扱いされていたのなら、メディアを避けても不思議ではない。だが、本田は日本のベスト16進出に貢献したエースなのだ。にもかかわらず、「声」を残さず、そのままロシアへ旅立った。
なぜ、本田圭佑は口を閉ざしたのか?
8月4日、モスクワ。街は巨大な煙に包まれていた。
連日、35度を超える異例の猛暑で、近郊の森林の泥炭層で火災が発生し、約13万ヘクタールもの土地が焼け野原と化したからだ。それでもCSKAの練習は行なわれ、うっすらと白く染まる空気の中に、本田の姿もあった。
練習が終わり、汗だくになっている本田に声をかけ、いきなり本題をぶつけた。
「インタビューを受けないのは、ひょっとしたらW杯のことを話したくないから?」
本田は歩みを止めることなく、下を向きながら答えた。
「それはありますね」
本田はクラブハウスで着替えを済ませ、ブラックのJEEPに乗って敷地から出てきた。
レコーダーを手に、車の横に立つ。
運転席のウィンドウが下がった。
――9月4日にパラグアイ戦が行なわれる。W杯の再戦になるが特別な思いは?
「W杯では結果的に負けているんでね。どう自分たちが仕掛けていけるかを示すなかで、勝ちにこだわりたい」
――W杯では、勝つよりも、負けないやり方を取ったということ?
特製トートバッグ付き!
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
photograph by Tamon Matsuzono