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スマートフォンがメジャーを変える!?
それでも消えない男同士の絆を見た。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byDiamond Images/Getty Images
posted2011/03/08 10:30
スマートフォンで無くなる会話もあれば、スマートフォンで始まる会話もある。写真はベンチでスマートフォンの機能を使ってはしゃぐメジャーリーガーたち
斎藤隆が移籍したブリュワーズではITが昔気質を支える!?
しかし、昔のカルチャーを懐かしんでいても仕方がない。この流れは止まることはないからだ。
それでも、メール(アメリカでは「テキストメッセージ」と呼ぶ)やフェイスブック、ツイッター主体のカルチャーのなかで、新しい「絆」を結ぶ方法が模索されている。
今季、斎藤隆が移籍したミルウォーキー・ブリュワーズにはそんな萌芽が感じられた。
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久しぶりに会った斎藤と挨拶をかわすと、開口一番返ってきたのはこんな言葉だった。
「ご覧になってお分かりになったと思うんですが、とにかく雰囲気がいい。(メジャーで)ブリュワーズは僕にとって4球団目になりますが、これだけ選手たちのコミュニケーションが取れている球団は初めてかもしれない」
ブリュワーズは阪神に在籍したセシル・フィルダーの息子、プリンス・フィルダーに代表されるように典型的な攻撃型のチーム。投手陣が泣きどころだったが、今季、ロイヤルズとのトレードでサイ・ヤング賞投手のザック・グリンキーを獲得、そしてブルペンの補強の一環として斎藤隆を加えた。
資金力がないからこそ「チームワーク」を大切にしてきた。
特にグリンキーの加入は大きなポイントで、現段階ではブリュワーズはナショナル・リーグ中地区の優勝候補と見られている。それを支えているのは「チームワーク」という見方がもっぱらだ。なぜ、ブリュワーズの雰囲気がいいかと言えば……
・生え抜きの選手が中心になっている
・チームリーダーの性格
・スマートフォンの活用
といった要素が取材から見えてきた。
まず、生え抜きが多いのはアメリカの中規模都市に本拠地を置く球団の特徴だ。数年前、ヤンキースやメッツ、レッドソックスといった球団が資金力で選手を補強したのに対抗できないと見た中規模都市の球団は、ドラフトで指名した選手を大切に育成してきた。
ブリュワーズではその甲斐あって、フィルダーだけでなく、リッキー・ウィークス(二塁)、ライアン・ブラウン(左翼)、コーリー・ハート(右翼)らマイナーで育成してきた選手たちがチームの中核となり、風通しが良い。
特にチームリーダーであるフィルダーは、明るいキャラクターなので練習中も笑いが絶えない。2年前、フィルダーがサヨナラホームランを打ったときに、チームメイトが本塁でひっくり返って迎えるというパフォーマンスがあったが、よほどみんなが仲良くなければ、そうした出迎えはしない。