濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
タイガー・ジェット・シンが凶器襲撃→観客が救急搬送…“事件”はなぜ起きた?「薄かった危機感、羨ましがるファンも…」再考すべき“プロレスの安全性”
text by

橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2026/10/20 11:04
10月17日、試合会場で客席襲撃を行ったタイガー・ジェット・シン(82歳)
サーベルで出血…観客は救急搬送された
どうやら観客のようだ。シンが入場時に振り回したサーベルが当たり血が出てしまったらしい。リングドクターが大きなガーゼを当てて治療をしている。意識はあって、大会関係者が話しかけていた。その後、この観客は救急車で病院に運ばれたという。
文字にすると「シンに襲われ観客が負傷し救急搬送」となる。軽傷だったとはいえ、被害を受けたのは間違いない。大会後、工藤は取材陣の質問に答えて事態を詫びるとともに、対策の強化についても言及した。観客が着ていた赤いTシャツはSareeeのグッズ。Sareeeはメインイベントに出場したから、この方はお目当ての選手を見ることができなかった。
この“事件”が報じられると、インターネットでは大きな反響が巻き起こった。裁判沙汰になってもおかしくないという声もあったが、“好意的”とも言える書き込みも。端的に表現すれば「うらやましい」ということだ。
ADVERTISEMENT
〈そういえば私も20年近く前「どハッスル!!」という番組でタイガー・ジェット・シンにトイレで襲われた事あります。その時は怖すぎたけど、オンエア後プロレスファンの方々から羨ましがられたよ〉
今回のニュースを受け、プロレス好きで知られる芸人のユリオカ超特Qは、SNSにそう書いていた。大怪我ではないことが前提ではあるが、ヒールレスラーに襲われるというのはプロレスファンにとっては“勲章”という面もある。今回、被害を受けた方がどう思っているかは別として、プロレスファンにはそういう不思議な感性もあるということ。
とはいえ、工藤も言ったように、運営側の対応が完璧だったとは言い難い。プロレスの試合では、場外乱闘などの際にセコンドについた選手たちが「立ってください!」「逃げて!」とリングサイドの観客にきつく呼びかけるもの。
選手にぶつかって闘いを妨げてしまうかもしれないし、たとえば選手が投げたパイプ椅子が体に当たる危険性もある。数年前のことだが、席から立とうとしない観客をスタッフが羽交い締めするように動かす場面も見た。
「シンだけはヤバいって言いますからね」
今回、セコンドやスタッフにそこまでの危機感があったようには見えなかった。乱闘ではなく入場シーンであり、リング周辺と客席を仕切る柵が設けられていたということもあるのだろう。だが、それも絶対に安全というわけではない。
会場で取材していたプロレス記者は「シンだけはヤバいって言いますからね」と教えてくれた。
「何かあったら襲ってくるらしいです。カメラがない場所でもやるっていうんだから凄いですよ」

