- #1
- #2
メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
楽天社員を辞めて“村上宗隆の通訳”に「でも、いずれ通訳は必要なくなる」32歳異色の転身「ムネさんが一人でメジャーの舞台に立つ姿を見たい」
text by

杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byJoseph Weiser/Icon Sportswire via Getty Images
posted2026/09/07 11:06
村上宗隆を通訳としてサポートする八木賢造さん(32歳)
上記通り、人付き合いの上手な村上はすでに十分にチームに馴染んでいる。ボディランゲージまで含めて会話は可能になっているため、口出しは不要という考えがあるのだろう。それと同時に、メジャーリーガーとしての村上の将来を考えても、自身が口を挟む機会が少なければ少ないほどベターという思いが八木通訳にはある。
「頭の回転の速い方ですし、英語の上達も早いですよね。これはムネさんにも言ったかもしれないですけど、通訳はいずれ必要なくなるとも思っているんですよ。最終的にはご自身でコミュニケーションを取ったり、メディアの方々への受け答えを含めてそれができるとなれば、通訳はそんなに必要ではなくなりますよね」
選手がアメリカでの生活に馴染み、成長すればするほど、通訳がやるべき仕事というのは確かに少なくなる。とはいえ、自身でやりとりできるようになれば、実際に通訳という役割自体が不要になってしまいかねない。安定したサラリーマンの立場を捨ててまで渡米し、ホワイトソックスと1年契約を結んだ八木通訳のキャリアにとってもそれは死活問題のはずだが……。
ADVERTISEMENT
「たぶんファンの皆さんも、メディアの皆さんも、(村上が)自身の口から言葉を届けるというのを一番求めていると思っています。それまで1年、2年、3年なのかわからないですけど、早く到達してもらう方が僕としては嬉しいです。それで少し残念な気持ちはもちろんあると思いますけど、それ以上に嬉しいでしょう。ムネさんが一人でメジャーの舞台に立つのを見たいって私も思っていますから」
故障からの復帰を願った日々を振り返った時と同様、“自身の仕事がなくなる日”を心待ちにする八木通訳の口調は心がこもって感じられた。根底にあるのは、村上にとって最善の結果になってほしいという思い。「一番近くで見させてもらって、野球に対する思いとか、人として尊敬できる部分があるので、純粋に応援ができます」という気持ちがあるからこそ、素直に成長を願うことができるに違いない。たとえその結果、一時的に自身がポジションを失うことになったとしても。
メジャーリーグという新しい環境に赴いた村上は良好なパートナーを得たのだろう。それはこの業界に飛び込み、これからスポーツ界でのキャリアをさらに開花させていきそうな八木通訳にとっても同じだったのかもしれない。今はまだお互いを必要とする中で、今秋はプレーオフというまた未知の戦いが待ち受けている。その激しいバトルの間も、八木通訳は村上の成功だけを願ってサポートに邁進するに違いない。〈全2回/前編から読む〉


