- #1
- #2
甲子園の風BACK NUMBER
「さわやかイレブン」「やまびこ打線」甲子園から遠ざかる名門公立校に“ある異変”「たしかに苦しいですけど…」徳島現地で見た、池田高校の“知られざる今”
text by

田中仰Aogu Tanaka
photograph byAogu Tanaka
posted2026/08/17 17:28
甲子園を3度制した名門・徳島県立池田高校の現在とは?【全2回の1回目】
9回表にはフライの処理をめぐって二塁手・川本梧天と中堅手・谷岡樹の接触もあった。負傷退場した川本に代わり三塁手・中浩斗が二塁を守ることになった。
「接触があって試合が中断しているとき、代わりにセカンドできそうなの、僕しかいないよな、と思ってました。だけど実際に告げられたときはビビったっす。ぶっつけ本番だったので」
興奮気味に試合を振り返る中。その頃、負傷交代した川本の側頭部に氷と包帯がまかれていた。
「そうやって勝つしかないんで、僕たちは」
ADVERTISEMENT
わたしは川本のことを記憶していた。昨夏の徳島大会、同じむつみスタジアムで、カメラマン席の前にボールボーイとして待機し、誰よりも早くファウルボールを取りに行く部員がいた。それが、背番号がつけられていない1年前の川本だった。
「すごいね、レギュラーになったんですね」と話しかけると、「はい! 去年もいましたよね? 覚えてます!」と川本ははにかんだ。
和田がしきりに話し、チームに浸透させようと努めた「粘りの野球」に、川本は手応えを感じていた。
「そうやって勝つしかないんで、僕たちは。バントを決めるのも、守備力も、自分の強みですし、その二つを徹底してやり抜いてきた1年間だったんで。自信あります」
和田が何度も繰り返した“ある言葉”
2回戦を取材しながら気になるシーンがあった。
接戦で迎えた終盤の9回表と10回裏。和田は部員たちを集めて何かを伝えていた。それだけ見れば珍しいことではないが、わずかに笑みを浮かべながら諭すように語りかける姿と、余裕を感じさせる佇まいが記憶に残った。どこか演じているように見えなくもなかった。
試合から3日が経った池田高校グラウンド。翌日に準々決勝が控えるこの日の練習は朝8時30分から行われた。キャッチボールのときは「足で放れ、下から放れ」、ノックを打つときも「足で放れ」。和田は同じ言葉を何度も繰り返している。打撃練習では「球の上3分の1を意識、3分の1を意識」のフレーズにかわる。
練習後、和田に話を訊く。
――「粘りの野球」は、言うは易く行うは難しで、とても辛くないですか。毎試合あのような試合で気力は持つのかと不思議で。
