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甲子園の風BACK NUMBER
「さわやかイレブン」「やまびこ打線」甲子園から遠ざかる名門公立校に“ある異変”「たしかに苦しいですけど…」徳島現地で見た、池田高校の“知られざる今”
text by

田中仰Aogu Tanaka
photograph byAogu Tanaka
posted2026/08/17 17:28
甲子園を3度制した名門・徳島県立池田高校の現在とは?【全2回の1回目】
野球部を率いるのは今春から監督に就いた和田哲幸だ。池田野球部のOBで筑波大を卒業後、鳴門や板野高、池田の定時制教諭を経て監督になった。
和田は1985年高校3年時のセンバツ甲子園に出場し、ベスト4進出を経験している。現在59歳で、PL学園の桑田真澄・清原和博と同じ学年にあたる。
今夏の池田にはもう一つ、特筆すべき事実がある。80年代の池田黄金期を支えた川原良正が投手コーチとして現場に復帰したのだ。高校時代にその指導を直に受けた和田が熱望して実現したものだった。
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「粘って粘って、最後に勝つ」。監督に就いてから和田が池田の部員たちに言い続けたフレーズである。超攻撃的な打力で知られた「やまびこ打線」とはまるで異なる野球だ。
武器は投手力です、と和田は言う。チームに長打を期待できる打者はほとんどいない。だから単打とバント、盗塁でつなぐ。終盤まで接戦に持ち込み、タイブレーク突入も厭わず、最終的に1点差で競り勝つ。甲子園を狙うために。それが、和田が選んだ野球だった。
監督「打線がやまびこしないので」
初戦は脇町高に6回コールド10-0で快勝、ベスト16に進出した。
7月19日、日曜日。2回戦の相手は徳島科学技術高校だった。陽が容赦なく照り射すスタンドは7割ほどが埋まっている。声援の数はわずかに池田が上回る印象だ。
スクイズ、併殺崩れ、失策、内野安打、犠牲フライ。池田はこうして5点を重ねていく。が、9回表に追いつかれて5-5同点。10回から投入された大久保が無死一、二塁からはじまるタイブレークを無失点に抑える。その裏に、ワイルドピッチで得点してサヨナラ勝ち。準々決勝進出を決める。
「打線がやまびこしないので、コツコツ、コツコツ。池田の野球ができました」
試合後に和田が安堵の笑みを浮かべる。
粘って粘って勝ち抜く。頻繁に耳にする定型句であるが、見ていて楽しいものでも、安心できるものでもない。和田が志向する野球は言葉にすれば凡庸だが、実際に見れば苦しさに似た感情が湧く。試合開始から終了まで緊張状態が途切れないため、容易に席を離れることもできない。

