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「正直、コートに立ち続けたい気持ちはある」さらば錦織圭…“73.1%”に秘められた唯一無二の「没頭力」と素朴な「負けず嫌い」が見せてくれた夢 

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秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byYuki Suenaga

posted2026/05/22 11:05

「正直、コートに立ち続けたい気持ちはある」さらば錦織圭…“73.1%”に秘められた唯一無二の「没頭力」と素朴な「負けず嫌い」が見せてくれた夢<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

今季限りでの現役引退を表明した錦織圭。日本テニス史上かつてない時代をつくった彼の最大の魅力とは何だったのだろうか

 19年全豪には第8シードで出場、4回戦で第23シードのパブロ・カレノブスタ(スペイン)を0−2から逆転した。第3セットは先にブレークを許したが、タイブレークで制した。最終セットは5−4からのサービスゲームを落としたが、気持ちを立て直した。10ポイント先取のタイブレークでは5−8から巻き返して、逆転勝利を収めた。この時点でのキャリア最長となった5時間5分の大接戦を錦織は「タフになったなと感じる。経験や体の強さ、いろんなものの積み重ねだろう」と振り返った。

素朴に「負けず嫌い」

 こんな試合を見るたびに、競り合いでの強さの理由は、集中力や思考力、戦術眼や修正力のような、きれいな言葉だけでは言い尽くせないと思わされた。「負けず嫌い」という素朴な言葉が最もふさわしいのかもしれない。

 折に触れて思い出すのが、14歳の錦織の、細身の背中だった。

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 04年9月のスペイン・バルセロナ。錦織はジュニア・デビスカップ日本代表として世界大会に出場していた。優勝候補スペインのエース、ペレ・リバとの試合は最終セットに入った。すでに試合開始から2時間が経過している。このセット、錦織は2度、サービスゲームをブレークして先行しながら、いずれも挽回を許した。

 終盤の錦織はチェンジエンドでベンチに戻るとすぐに大きなタオルを頭からかぶり、隣りに座る村上武資監督と言葉をかわすことはなくなった。村上は後日、「言うべきことなんて何もないと思っていました」と明かした。監督は14歳にすべて任せたのだ。筆者はベンチ後方の観客席にいた。錦織の表情は一切、読み取れなかったが、タオルに覆われた背中が「負けるものか」と語っていた。

 錦織が試合を制した。タイブレークのない最終セットは9−7までもつれ、試合開始から3時間40分が経っていた。

 07年のプロ転向以降、右ひじ、右手首、左股関節など大きなけがを何度も経験したが、生来の負けず嫌いは屈しなかった。5月1日に今シーズン限りでの引退を発表したが、「正直に言えば、今でもコートに立ち続けたい気持ちはあります」と記すなど、葛藤があったことも見てとれる。最後まで復活の可能性を探り、体の不調に抵抗した。これも、負けず嫌いの意地だったのではないか。

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