テニスPRESSBACK NUMBER

「正直、コートに立ち続けたい気持ちはある」さらば錦織圭…“73.1%”に秘められた唯一無二の「没頭力」と素朴な「負けず嫌い」が見せてくれた夢 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

PROFILE

photograph byYuki Suenaga

posted2026/05/22 11:05

「正直、コートに立ち続けたい気持ちはある」さらば錦織圭…“73.1%”に秘められた唯一無二の「没頭力」と素朴な「負けず嫌い」が見せてくれた夢<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

今季限りでの現役引退を表明した錦織圭。日本テニス史上かつてない時代をつくった彼の最大の魅力とは何だったのだろうか

 錦織の出身地である島根県の地元紙『山陰中央新報』は、引退を伝える紙面で、幼い錦織を指導した故柏井正樹さんの「ナイス卑怯」という言葉を紹介している。相手をだます、あるいは裏をかくテクニックをコーチは褒め、その類い希な長所を伸ばそうとした。錦織もまた、それを磨いていった。

 テニスの試合は自分の思うようにならないことが多い。だが、試合がもつれればもつれるほど、相手から情報が集まり、その分、戦術の精度が上がる。だましのテクニックのアイディアも浮かぶだろう。劣勢に開き直れば、試していなかった攻略法を使う機会も生まれる。集中力、冷静さ、頭脳の明晰さを失わなければ……。そこにも錦織が競り合いに強かった理由がある。

フルセット熱戦譜

 最初に紹介した24年全仏のディアロ戦は2−0からもつれたフルセットだが、0−2から挽回して勝った試合も少なくない。

ADVERTISEMENT

 25年全豪1回戦では、予選を勝ち上がったチアゴ・モンテイロ(ブラジル=105位)に2セットダウンから逆転勝ちした。プロテクトランキングで出場した錦織が、全豪では19年以来6年ぶりとなる白星をつかんだ試合だ。第3セットには相手にマッチポイントがあり、錦織は試合後、「彼がめちゃめちゃ押していた。どう考えても、あっちの方が勝つにふさわしいところまでは行っていた」と明かした。

 故障がちで、全盛期のような強さはない。男子ツアー全体として攻撃力と守備力が飛躍的に上がり、錦織がショットで相手を打ち負かす場面は減っていた。それでも、「ほぼ、あきらめていた」ところから巻き返すのだ。

 もちろん、反発力を発揮したのはキャリア終盤に限ったことではない。17年全仏では鄭現(韓国)に苦しめられた。セットカウント2−0から追いつかれたが、第4セット0−3からの降雨順延にも助けられ、最終セットで振り切った。錦織が「雨が降らなかったら100%負けていた」と振り返る苦戦だった。

【次ページ】 素朴に「負けず嫌い」

BACK 1 2 3 4 NEXT
#錦織圭

テニスの前後の記事

ページトップ