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「結局は結果でしか判断されないのかよ、と」“貴族”佐藤天彦が振り飛車をあきらめ…初の順位戦A級3連敗「残念、無念さが」ホンネを吐露
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大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph byShintaro Okawa
posted2026/05/16 11:14
2016年名人戦での佐藤天彦九段。名人戦朝鮮語の後のA級順位戦でのリアルな心境を語ってくれた
「何を考えていたんですかね?(笑)。順位戦の星取りが厳しいことに加えて、もう振り飛車主体でできないかもということのほうが悩みだったかもしれません。居飛車党から転向してきた時は戻らないつもりでしたから」
——え、そうだったんですか。
「だって居飛車党としての2年のブランクは、めちゃくちゃでかいんですよ。といって最初から両刀使いになろうとするのも難しい。振り飛車をやるというのは、この時代においては古典派の交響曲のような、わかりやすい将棋をファンにお見せしたいという気持ちもあったんです。でもそれって対戦相手にとってもわかりやすいんですよね。振り飛車の対策に一本化できるんで。だから振り飛車を断念することは、寂しさというか、残念、無念さも抱えながらの決断でした」
棋風改造は下のクラスのほうが始めやすいんです
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——4回戦の千田翔太八段戦は10月20日に行われました。ここでついにといいますか、後手で居飛車の力戦型を用いましたね。
「ただ千田さんに僕の居飛車を完璧に咎められてしまったんです。超久しぶりに用いたのに、いきなり定跡になるような対策をやられてしまった。これも藤井猛九段との話で思い出したことがあって、棋風改造は下のクラスの時のほうが始めやすいんですよね。結果とともにモチベーションが上がって、戦い方もより洗練されていく。それが僕にとっては20代中盤で得意戦法にしていた横歩取りだったと思います。でもA級のような上位クラスになると、うまくいかなかった時のリスクが大きいのでやりづらくなっていく。自分が新しいことに挑戦した瞬間に、いきなりこれでダメですよね、って突然言われるみたいな(笑)。それで実際に負かされて、モチベーションが上がりづらくなる。それが顕在化した一局だったような気がします」
盟友・渡辺明の休場…降級枠を意識したか
——この4回戦の辺りで、天彦さんの友人でもありライバルでもある渡辺明九段の年度内の休場が決まり、5回戦の渡辺戦は不戦勝となりました。そして降級枠の1つは渡辺九段に確定しました。それを知った時、天彦さんはどのような心境だったんですか?
「もちろん降級枠が少なくなることは、自分の安全度が高まることになります。ただ渡辺さんの状況は本当に大変で、最近こそご自身の状況を受け入れて、元気を出そうかなという感じになっているのかもしれないですけど。そもそも自分は渡辺さんの詳しい状況をこの時は知らなくて、休場も僕にとっては突然の知らせだったんです。それで事情をよく知る戸辺さん(誠七段)に慌てて連絡を取って、渡辺さんに会いに行ったんですけど、思った以上に大変な状況であることがわかりました。だから降級の可能性が下がったとかそういうことは考えたくありませんでしたね」〈つづきは下の【関連記事】へ〉

