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「反応」「ジリジリで」「(中谷潤人は)一発あるからね」井上尚弥の試合運びを支えた真吾トレーナーの“声掛け”の妙とは「右ドン、アッパー!」
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2026/05/13 06:00
井上尚弥と中谷潤人のビッグマッチの試合展開に大きな影響をおよぼした真吾トレーナーの「声掛け」とはどんなものだったのか?
声は大きいが、柔らかい性質のものだ。冒頭から極度の集中モードに入る尚弥を決して邪魔することもない。<見切るよ><中、絞るよ>などとディフェンス面にほぼ終始してちょっとずつ手綱を引いていた。
今ならその意味が分かる。
試合まであと1カ月半というタイミングで、真吾トレーナーにじっくりと話を聞く機会があった。昨年末、尚弥はサウジアラビアでWBC2位アラン・ピカソ(メキシコ)の挑戦を受け、危なげなく大差の3-0判定勝利を収めた。しかし父は「ナオの本来の試合じゃない」と言い切っていた。
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「ナオは自ら『倒す』と宣言しました。順を追ってダメージを与えていければきっと後半に倒せたはず。でも相手のガードの上を力任せにガンガン打って、ちょっと感情的な部分が出てしまった。普段なら絶対に外せるようなパンチももらっていて、気持ちがやっぱり前に行き過ぎちゃうとヒュッと引くことができない。冷静なナオと力んだナオなら、間違いなく冷静なナオのほうが強いですから」
「冷静な井上尚弥」をキープさせる
井上尚弥は好戦的なマインドを持つボクサーだ。チャンスと見れば一気に襲い掛かって試合を終わらせてしまうモンスターであり、どのラウンドであっても見せ場をつくることのできるスーパースターである。だが、ときに「気持ちが前に行き過ぎ」を突かれてしまうことがある。
相手は、いかなるパンチでも倒せる力を持つ、同じパウンド・フォー・パウンドにランクされる中谷である。終始「冷静なナオ」をキープさせていくための声掛けでなければならないわけだ。
1ラウンドを終えたインターバル。リポーターを務めた日本テレビの中野謙吾アナウンサーが、尚弥に語った真吾トレーナーの声を伝えてくれている。

