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藤井聡太“不調だった説”「ほとんどの人はAIの評価値しか…」永瀬拓矢がズバリ語る一方で「能力の持ち腐れですよ、持ち腐れ」にじむ王将戦の無念
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大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph byShintaro Okawa
posted2026/04/12 06:02
2026年に入って“不調説”が流れた藤井聡太六冠だったが、永瀬拓矢九段はそれについてハッキリと言及した
第6局の取材の時に「藤井さんは『しぶとい』という感じですか?」と尋ねたところ、「それはもちろんそうなんじゃないですか。将棋の内容もこれまでと変わっていないですし。藤井さんも疲れはあるかもしれませんが、基本的に調子とかはないんですよね」と返ってきたことが印象に残っていたからだ。
早々にカド番に追い込まれた藤井には不調説も上がっていた。盤を挟んで誰よりも濃厚に接していた永瀬はどう感じていたのだろう。
すると永瀬はきっぱりと言い放った。
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「ほとんどの人はAIの評価値しか見ていないですし、端的に言って、藤井さんの調子についても何もわかっていません。そういう人の言葉には責任も重みもありませんから」
思わず黙ると、永瀬は言葉を続けた。
「指していても藤井さんの状態はいつもと変わりませんでした。ではなぜフルセットまで行ったかと言えば、私も一生懸命やっていますから。それでいいんじゃないですか」と突き放すように言う。
4勝4敗…対藤井戦の勝率が上がったのが収穫です
少しの間、沈黙が訪れた。チャイムとともに流れた車内放送が、この間を取り繕ってくれたように感じてホッとした。
「振り駒勝負ができるようになりましたからね」
永瀬がポツリと漏らした。
自分が先手番でしっかり勝てるようになったということだ。この記事の1回目でも尋ねたが、だからこそ最終局は先手が欲しかったのだ。
「最終局の先手はでかいですよね、さすがに」と永瀬は言う。本局の3日後に棋王戦第5局があったが、藤井はそこでも先手番を引いた。あくまで勝利の要因の一つでしかないが、天運を引き寄せるのが王者だと思わされた。
永瀬が先手で勝てるようになったのは、さらに実力を上げたからだ。その証拠に、今年2月には自己最高のレーティングを更新し、藤井との差もこれまでで一番縮めている。
「対藤井戦の勝率が上がったのが収穫です。藤井さんとの直近は4勝4敗ですからね」と永瀬は言う。この王将戦のシリーズ中に、永瀬は叡王戦の準決勝で藤井と当たり、勝利しているのである。
確かに痛かったですよね。うーん…
改めて今シリーズについて聞いてみた。先手番で勝てるようになったということは、先手で有利になっていた第5局で逆転負けを喫したのが痛かったのではないか。

