甲子園の風BACK NUMBER
甲子園出場に大金が…“ドタバタ寄付金集め”ウラ側「高知農業の卒業生に手紙を」校長明かす「応援グッズで1000万円」「テレビ映るので…」現場の声
text by

井上幸太Kota Inoue
photograph byKota Inoue
posted2026/04/04 11:00
今春の甲子園、21世紀枠で初めて出場した高知農業高校
「本校にも吹奏楽部がありますが、部員数が多くない。部に所属していない、校内の吹奏楽経験者を募って、何人かは見つけられましたが、まだ小規模です。そこで、近隣の高校数校に協力をお願いしています。ですが、組み合わせによっては定期演奏会と重なる可能性があったり、雨天順延で日が変わったら来てもらえなくなる場合もあったりするので、調整が難しかったですね」
ダンス部、チアリーディング部は存在しないため、チアは、文化祭のステージ発表でダンスを踊った面々を中心に結成した。まさに“総力戦”での甲子園初陣である。
「ピッチャーの病院検診も…」現場ウラ側
準備に追われるのは、現場も同じだ。部長を務める森澤樹紀は、「地方大会の3、4倍くらい」の提出書類に面を食らったそうだ。中でも驚かされたのが、“検診”だったという。
ADVERTISEMENT
「指定の病院でピッチャー陣が検診を受けて、診断書を用意する必要がありました。聞いた話だと、秋に登板したピッチャー全員が受診しないといけないみたいで。ウチは2人だったんで2、3時間で終わったんですけど、明徳さんや高知高校さんは、色んなピッチャーが投げるんで、一日がかりだったこともあると聞きました」
校長の塩田は、3月末をもって、長年勤めあげた教員を定年退職する。定年後に再び教壇に立つ再任用は選ばず、春からは、かねてから取り組む農業に専念する予定だ。教員生活の最後の最後に、とんでもない“大仕事”が待っていたが、自身も高知農出身で、後輩でもある選手たちに送る眼差しは優しい。
「選手たちは、私にとって大事な生徒。選手が憧れの甲子園の土を踏んで、笑顔でプレーしてもらいたい」
迎えた当日…寄付金は?
そして迎えた3月21日。日本文理との初戦には、約2000人の大応援団が、高知農の校名と校章がプリントされた、黄緑色のジャンパーを着て、アルプススタンドを彩った。
高知・室戸高の吹奏楽部員と、地元の吹奏楽経験者を交え、約50人規模で結成された演奏部隊は、同じ農業校で旋風を巻き起こした金足農にインスパイアされた、チャンステーマの「Gフレア」など、迫力のある音色を響かせた。
一塁側アルプススタンドのライトポール付近から声援を送った塩田が、試合途中に振り返る。そこには、格別の光景が広がっていた。
「一面が緑のジャンパーで埋まっている様子を見て、ありがたい気持ちになりました。目標の2500人には届かなかったんですけど、選手とアルプススタンドの一体感は出せたんじゃないかなと。応援団も明るく元気に選手を励ましていましたので、農業高校のよさを出せたと思っております。最後の最後にいい思いをさせてもらいました」
卒業生による寄付は総額1000万円にのぼり、センバツ開幕直前からクラウドファンディングの募集もはじめた。閉幕後に寄付金状況をあらためて訊いたところ、まだ未達で厳しい状況に変わりはないが、到達が少しずつ見えつつあるという。
こうしたドタバタ劇を経て、高知農業は甲子園初出場を果たした。が、話を聞くと、わずか5年前の野球部新入部員が0人だったことがわかった。いかにして部員を増やしたのか――。
グラウンドへ向かった。
〈つづく〉



