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「あなたがそれを作ったのです」坂本花織に海外記者が伝えた言葉…坂本はなぜ選手、関係者から愛されたのか? 最後の世界選手権で見せた“最高の演技”
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2026/04/02 11:03
世界選手権で有終の美を飾った坂本花織
渡辺倫果からのメッセージ
辞退する選択肢も考えていたから、年が明けて2026年になった早々、世界選手権日本代表の補欠である渡辺倫果に「ちょっと心づもりしておいて」と伝えていた。オリンピックを最後にして世界選手権は辞退する、という思いもあったことはそのエピソードにもうかがえる。それくらい、オリンピックに懸ける気持ちは強かった。
ミラノ・コルティナ五輪個人戦は、フリーで連続ジャンプが1つ入らなかったことから銀メダルで終えた。
やりきった、と思える演技にはならなかった悔しさをばねに、世界選手権出場を決意する。
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「フリーの直後、帰国するまでに世界選手権に出ようと決めました」
渡辺にはすぐ連絡したと言う。
「帰国と同時に、『すいませんが最後出させていただきます』と連絡をして、倫果は『最後、かおちゃんが頑張っている姿を見たいからぜひとも出てください』と返事をくれました」
坂本、渡辺それぞれの人となりがうかがえる。
コーチが明かす「精神力が私と違います」
世界選手権出場は決めた。ただ、オリンピックでは団体戦でショートプログラム、フリーのどちらも出場し、さらには日々、チームメイトの応援のため会場に駆けつけた。むろん個人戦も戦い抜いた。
懸命な日々に、消耗は大きかっただろう。指導を受ける中野園子コーチから「1週間休んだら」とアドバイスを受けて、10日間ほど氷には乗らず、リフレッシュに努めた。そこから練習を再開して、世界選手権を迎えていた。
一度定めた集大成の舞台が終わり、そこから最高の演技へとたどり着いた。強靭な精神力あればこそだった。
中野コーチも、金メダル獲得後、坂本を評してこう語っている。
「精神力が私と違います」
ときに厳しく指導にもあたってきたコーチの、手放しの称賛だった。

