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坂本花織25歳“ウラで後輩を助けていた”…中井亜美らへの情報提供、試合前日もりくりゅう生観戦「何か力になれれば…」だから日本フィギュアは強かった
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野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2026/02/21 06:00
ミラノ五輪女子シングルで銀メダルを獲得した坂本花織ら、日本フィギュアのメンバー
「Time To Say Goodbye」のメロディに溶け込むように滑り出す。冒頭の3回転ルッツを降り、1つ目のスピンが終わると、幸せな温かさが心を満たした。
「スピンの後から、今までの中で感じたことのない不思議なリラックスモードになって、『なんだか楽しいな、今この瞬間を満喫しよう』と思って滑っていました」
滑りは後半になるほど勢いを増し、坂本らしい情熱が溢れる滑りで、会場を惹き込んでいく。最後はガッツポーズで締めた。得点は77.23点での2位発進。団体戦で自らがマークした78.88点に及ばず「あれれ」と首をかしげながらも、笑顔は消えなかった。
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首位は、トリプルアクセルを決めた中井亜美だった。後輩の活躍を、素直に喜ぶ。
「世代交代しても、日本はもう安泰ですね。追いかける方が楽なので、最後の最後までこうやって追いかける立場でいさせてくれる亜美ちゃんに感謝です」
「花織は強いです!」コーチは送り出した
中1日空けて迎えたフリーも、引き締まった良い表情で氷に降り立った。滑る直前、4歳の時から師事してきた中野園子コーチは、いつもと同じ言葉をかけた。
「花織は強いです!」
手の甲を2度、強く叩かれると氷の真ん中に出ていく。曲は「引退のシーズンに滑りたかった」という「愛の讃歌」だ。
演技冒頭のダブルアクセルは、飛距離も流れもある、まさに坂本のアクセル。ジャッジ9人のうち7人が「+5」をつけた。次々とジャンプが決まり、スピード感も落ちない。
「緊張感はショート同様で、本当にいい緊張感でした。体の動きも悪くなかったです」
しかし演技後半の「3回転フリップ+3回転トウループ」で、フリップの着氷が詰まり気味になり、トウループをつけられなかった。最後に残している3回転ループを連続ジャンプにするというリカバリーも有り得たが、そこは予定を変更せずにこなした。
「トウループをつけるのも考えたんですけど、でも、もうこれ以上マイナスは付けられない。ループからの連続ジャンプはあまりやったこともなかったので、残りは確実に決めようと思い、攻めずにやり抜きました」
演技を終え、溢れ出る悔しさを呑み込んで、日の丸が揺れる観客席に「ありがとう!」と手を振る。リンクサイドにいた中野コーチに抱きしめられると「ううっ」と声が漏れ、涙が滲んだ。


