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東大・京大合格も出す「長崎屈指の公立進学校」がなぜ甲子園21世紀枠の候補に!? 「1日1時間半の練習」で140km投手を3人育てて躍進の秘訣 

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内田勝治

内田勝治Katsuharu Uchida

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posted2026/01/28 06:02

東大・京大合格も出す「長崎屈指の公立進学校」がなぜ甲子園21世紀枠の候補に!? 「1日1時間半の練習」で140km投手を3人育てて躍進の秘訣<Number Web> photograph by Katsuharu Uchida

グラウンド横の坂道をダッシュする長崎西高の選手たち。限られた時間のなかで頭脳的な練習によって力をつけてきた

 部員たちは、練習ができる喜びに満ちあふれている。授業がない土日祝日でさえ、午前、午後を通しての「1日練習」は禁止。勉強時間の確保に充てられるが、県大会で4強以上に進んだ時にだけ、学校側から許可が下りる。

 12月のある土曜日。選手たちは午前中に体力強化や打撃練習を行い、午後からシートノックやシート打撃で実戦勘を養っていた。

やっと1日練習ができる

「昨秋の県大会で準優勝したので、ようやく1日練習をすることができるんですが、試験休みなどもあって、まだ数回しかやれていません。ただ、制限があるからこそ、その1分1秒に対する思いが集中力を生むんです。時間がある環境では、この『1秒の重み』は決して理解できないと思います」

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 進学校特有の制約下で、宗田監督が勝機を見出すために提唱したのが「5B+E」という独自の指標だ。

「ベースオンボールズ(四球)、バッテリーエラー、バントミス、ボーンヘッド、ベースランニングミス。この5つの『B』を徹底的に排除し、さらにエラー(E)による自滅を防ぐ。これができれば、能力で勝る相手とも五分に戦うことができるんです」

 90分という短い練習時間の大半は、この「5B+E」をいかに減らすかというシミュレーションに割かれる。派手な打撃練習よりも、1球の重みを脳に刻み込むことに重点を置く。

今の子たちには理論的な説明が必要

 この「知の野球」を、科学的な側面から支えているのが、外部コーチの安藝(あき)隆房さんだ。77歳の安藝コーチは、ナショナルトレーニングセンター(NTC)でスポーツ医学やバイオメカニクス(生体力学)を学び、指導に物理学と解剖学を持ち込むなど、時代に合わせてアップデートを重ねてきた。

「今の子たちは、理屈で納得しないと動きません。だから私は、地面反力をいかに運動エネルギーに変えるか、といった理論をパワーポイントでプレゼンしたりします。投手は軸足から踏み出す足へ体重移動する『並進運動』の速度に比例して運動エネルギーを獲得することができ、利き腕の速度が増すことで球速の向上につながります。そうやって理論的に説明をすれば、彼らは目を輝かせて聞き入ります」 

【次ページ】 公立校にして140キロ台の投手が3人も

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