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高校野球で素朴な疑問「フツーの公立校が智弁学園に勝てる?」…昨秋は県4強“偏差値67”奈良トップ級進学校に聞く“番狂わせの論理”「潜在意識を変える」
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田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2026/01/28 11:02
奈良県の郡山高校野球部を率いる岡野雄基監督。令和の時代に公立の進学校が甲子園常連の強豪校に勝つには何が必要なのだろうか?
森本時代の郡山は、ランナー一、三塁からダブルスチールで得点するといったように、攻撃的な機動力が持ち味だった。
高校時代の岡野もそうやって指導を受けてきた。送りバントひとつとっても、ただ監督のサイン通り忠実に遂行するのではなく、ファーストとサードがチャージをかけてきたらバスターに切り替えるといった、バッターランナーである自分も生きる術を身に付けさせていたのだという。
「森本監督が築かれた土台というのは、今も引き継がれている部分は多いです。バスターもそうだし、バントの構えをしたときにピッチャーが変化球を多く投げてくるようなら、あえてバットを引いてランナーがスタートを切る、とか。サイン上は『バント』かもしれないですけど、試合で選手が肌感覚でそういったことを感じながら『いける!』と思えば、自発的なプレーもよしとしていて。思い切って仕掛けられた場面というのは、感覚的にはほぼ成功している印象があります」
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郡山の走塁への高い意識と完成度は、奈良のライバル校も認めるところである。
同じ進学校として昨夏に県ベスト8と、近年、目覚ましい台頭を印象付ける畝傍高校の雀部尚也監督は、このように敬意を表す。
「練習試合もたまにさせていただくんですけど、脚を使うきっちりとした野球で点を取ってくる姿勢は見習うべきところです」
勇猛果敢な走塁の背景からもわかるように、郡山が強者との差を埋めるために大事とするのは裏付けである。明確な根拠があればこそ「いける」と、選手たちにも自信が漲る。
考えて物事に取り組めば…「最後は僅差になる」
データの活用もそのひとつだ。
個人データをランキング形式にし、“見える化”することで選手たちに考える力を養わせているように、岡野は相手チームの分析にも同じモチベーションを求める。
「考えて物事に取り組む。そういう努力は得意なんちゃうん。少しでも勝てる確率を上げていけば、最後は僅差になんねんから」
監督はそう言ってチームの行動意欲を駆り立てる。試合中継を録画し、動画コンテンツをくまなく漁る。もちろん、球場に出向いて偵察もする。一つずつ勝てる裏付けを集め、そして自信を植え付けていくのだ。


