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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「衰えただの、ピーク過ぎただの…」井上尚弥本人も感じていた“アフマダリエフ戦前の異様な空気”のナゾ…限界説を覆した完勝のウラに「敗者の誤算」
text by

曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2025/09/17 17:02
9月14日、「最大の強敵」と言われたアフマダリエフに勝利した井上尚弥
「衰えただの、ピーク過ぎただの…」
「スベってました?」
9月15日、大橋ジムで行われた一夜明け会見で、井上は前夜の「誰が衰えたって?」という発言を楽しそうに振り返った。そして「どこかで“衰えた”という報道を目にしたのか」という問いかけに対して、間髪入れずに言った。
「どっかで、ってLeminoのCM見てくださいよ! どっかでじゃないですよ!」
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すし詰めの報道陣に笑いが広がる。井上も相好を崩して、こう続けた。
「数発、ちょっと被弾するシーンがあったり、30戦、31戦やって2度のダウンがあったり。それだけで衰えただの、ピーク過ぎただの、言われ放題なんで」
他愛のない冗談のようでもあり、“こちら側”が勝手に抱いていた懸念を見透かしているようでもあった。試合だけでなく、疑いの目を向ける世間との戦いにおいても、井上尚弥は完璧な勝利を収めたのだ。
疲労と興奮を引きずったまま横浜駅のホームにたどり着き、忘れがたいほど蒸し暑かった名古屋の夜の余韻に浸る。汗でべたつくシャツに辟易しながら、疑り深い世間の一員として、心地よい敗北感を噛みしめていた。

