- #1
- #2
日々是バスケBACK NUMBER
「祖母が沖縄出身、ミドルネームは“泰斗”」女子バスケ日本代表HCコーリー・ゲインズ(60歳)ってどんな人? 運命を変えた“クレイジーな青春時代”
text by

宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byNBAE via Getty Images,Yoko Miyaji
posted2025/08/22 11:05
現役時代はNBAでプレーしたバスケットボール女子日本代表HCのコーリー・ゲインズ(1990年撮影)。右の写真は昨年、河村勇輝の視察に訪れた際のもの
こうしてゲインズは80年代にラン&ガンの先駆者、ウェストヘッドのもとで大学最後のシーズンを送り、アップテンポなバスケットボールを学んだ。バスケットボールのアナリティクス(スタッツ分析)が進み、効率のいい得点のあげ方としてレイアップや3ポイントシュートを重視することがバスケットボール界の常識となり、ペースの速い戦い方が評価されるようになるずっと前のことだ。
その後、彼はNBAやマイナーリーグ、日本(JBL時代のジャパンエナジー)を含む海外のチームでもプレー。現役引退後はマイナーリーグのABAロングビーチ・ジャムや、WNBAフェニックス・マーキュリーでウェストヘッドのもとアシスタントコーチを務め、さらにウェストヘッドが次のチームに移った後に、後任ヘッドコーチとしてウェストヘッド流バスケットボールを続けた。マーキュリーでは2009年にWNBA優勝も果たしている。
「LMUでやっていたことは、かなり時代の先を行っていました。あの頃は、まだアナリティクスなどという言葉は使われていなくて、単に『クレイジー・バスケットボール』と呼ばれていました」とゲインズは笑う。
ADVERTISEMENT
「私はあれこそ、バスケットボールのプレーされるべき方法だと感じていました。でも、それが世界に浸透するのに時間がかかった理由は理解できます。なぜなら、コーチたちは選手たちにコントロールを譲りたくなく、ペースを速くすることは規律に欠けると考えていたのです。でも、実際はペースを落とし、ボールをインサイドに入れるというのも規律なら、毎回全力でプレーし、速く動き、激しいディフェンスをするというのも規律です。そして、そのスタイルが現在、勝利へと導くバスケットボールなのです」
日本代表に植え付ける“カオス”
今、ゲインズが日本女子代表で教えている『オーガナイズド・カオス』なバスケットボールも、すべてはウェストヘッドのラン&ガンが元になっている。
「当然ながら色々と進化はしていますが、スタイルはウェストヘッドのバスケットボールです」
最近では、世界中で速いペースのバスケットボールが主流となってきている。男子バスケットボールより少し遅れていた女子バスケットボールも、東京五輪で日本代表が速いペースと3ポイントを武器に銀メダルを取ると、少しずつ同じような戦術を取るチームが増えてきた。
それでも、ゲインズは他のチームが同じような戦法を取っても、それを上回る自信があるという。
「人々は真似しようとするかもしれませんが、私は彼らが本当にその意味を理解しているとは思えません。私は恐れることなく、リスクをとり、賭けます。一部の人々は手綱を離すことを恐れていますが、私は手綱が泥にまみれていても気にしません。ひとつ言えることは、私は失敗から学ぶということ。すべての失敗には学ぶべき教訓があります。失敗を恐れて、目標を達成しようとしないことこそがやってはいけないことです」
「失敗を恐れずに挑む」──。これは、ゲインズが選手たちにも説いていることだった。



