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「3浪しました」“本気で東京藝大を目指した”異色の経歴…玖麗さやか25歳はなぜプロレスラーに?「練習生時代は“できない組”」スターダムで花開くまで 

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原悦生

原悦生Essei Hara

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posted2025/07/19 17:01

「3浪しました」“本気で東京藝大を目指した”異色の経歴…玖麗さやか25歳はなぜプロレスラーに?「練習生時代は“できない組”」スターダムで花開くまで<Number Web> photograph by Essei Hara

スターダムで活躍する玖麗さやか(25歳)。藝大志望からプロレスラーへと転じた異色の経歴を持つ

「ミラノ(コレクションA.T.)さんが技術的なことを教えてくれたんですが、そこに『できる組』と『できない組』があった。自分はできない方。日記にも書いたし、悔しくて泣きました。しょんぼりというより悔しい。私はもっとできるはずだって。家で練習しました。関節の取り方、理屈もわからなくて、形も覚えられない。人型の真っ白の全身タイツの中にいろいろ詰め物をして、人形を作って。足とか腕とかぐにゃぐにゃなんですけど、それを相手に極めていた。できないところを人に見られるのが恥ずかしくて」

「頭真っ白」憧れだった上谷沙弥とのデビュー戦

 2023年12月25日、デビューの日がやってきた。

「あまり覚えていないんですが、言われたのは1カ月くらい前だったと思います。一番に『うれしい』が来て、同時に不安も。デビューはスタートなんですけど、練習生としてのゴール! 練習生期間は苦しい感じだったので、ハッピーでした。上谷(沙弥)さんとやりたいですとお願いしました。ゲートから短い花道があったのですが、出た瞬間から頭真っ白。照明に照らされて多くの人に見られることってなかったから、緊張しました。あんなに一人ひとりの顔が見えて、声が聞こえると思っていなかった」

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 デビュー戦にしては、玖麗は技を繰り出すことができた。得意としているスピアー・タックルも初戦から使っている。

「同期では弓月が先にデビューして、柔道やルチャの技を使っている。蘭奈やさくらあやは空手や難しい関節技を使っている。それには勝てないから、自分にできることって何だろうと考えて……。正面からぶつかっていけることしかなかった。恐怖心は少なくて、最初からドロップキックでも思いっきりいけた。体を全力でぶつけるのが合っているんですよね。負けん気と根性。ありがちなんですが、自分に合っていると思ってスピアーを練習しました。気持ちを伝えられる技。難しいことはできないので、必死に何かやる。関節も得意じゃなくて。必死過ぎて考えられなくなっちゃう。そんな状態でもできることを、と」

 玖麗はしみじみとデビュー戦を思い出していた。

「デビュー戦、勝つとは誰も思っていなかったでしょうが、どんなに差があると思われていても、試合ってなるとわからないじゃないですか。負けは悔しいですよね。デビュー会見の時は、上谷さんが『一緒に頑張って行こうね』って言ってくれた。激励だったと受け取っています。練習生の時に上谷さんが憧れの選手になっていた。試合を終えて、より好きになりました」

【次ページ】 上谷沙弥に叩き込まれた「赤いベルトの厳しさ」

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