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ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
「大きなニュースになったのは…」KENTAが明かす“10年以上ぶりNOAH再入団”の全真相…「得意技禁止」「ケガさせるのは重罪」のWWEを経た現在
text by

堀江ガンツGantz Horie
photograph byNOAH
posted2025/07/16 17:01

WWE、新日本を経てNOAHに再入団を果たしたKENTA
「人気選手をケガさせるのは“重罪”とされるんです」
WWEではケガにも悩まされた。ようやく向こうのスタイルにもアジャストし始め、年間最大のイベント「レッスルマニア31」でのアンドレ・ザ・ジャイアント杯バトルロイヤルにも出場。さあ、これからという時に左肩を負傷し長期欠場。会社の意向に従いアメリカで手術を行ったが、復帰後も肩の可動域は大幅に制限されることとなり、結果的にプロレス人生を大きく左右するほどのケガとなってしまった。
「あの肩のケガは本当に悔やまれます。アメリカで手術したのも悔やまれるし、ケガした試合もハッキリと覚えてるんですけど、しなくていいような動きをしてしまったんですよ。あれがなかったら、その後のレスラー人生もだいぶ違ったんじゃないかっていう思いは正直ありますね」
ケガは自分のケガだけでなく、対戦相手のケガもキャリアに影響した。KENTAはメインロスター昇格してすぐ、対戦相手に顔面骨折のケガをさせてしまったのだ。
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「相手をケガさせることへの恐怖なんて、日本では感じたことなかったんですよ。ケガをしたら、もう『それはそういうものだ』という感じで。ケガをしたほうも試合に出ながら治すみたいな感じで、ちょっとやそっとのケガじゃ休まず出続けるのが当たり前でしたから。
相手をケガさせたらやばいっていう怖さっていうのは、向こうで初めて感じましたね。僕がけっこう売り出し中の選手とNXTで試合した時、ヘッドコーチに『あいつをケガでもさせたら、おまえクビになるぞ』って言われてムカつきましたけど、向こうで人気選手をケガさせるっていうのは、それぐらいの“重罪”とされるんです。だからといって『相手をケガさせちゃいけない』と思いすぎると、何もできなくなってしまう。もう袋小路にハマってましたね」
自分のフィニッシュホールドは禁じられ、ハードヒットなスタイルは求められず、相手をケガさせてしまう恐怖を感じながらの試合。手足を縛られて羽をもがれたも同然の精神状態に追い込まれたのだ。
「このままじゃ恥ずかしくて日本に帰れない」
そんな状況下で、2018年に古巣NOAHから出場オファーが届く。9月1日両国国技館で行われる丸藤正道デビュー20周年記念大会での一騎討ちをやってほしいというものだった。
「僕はNOAHに温かく送り出してもらったからには、自分の中で納得できる何かを残すまでは帰らないと決めていたんですよ。だから当時は『このままじゃ恥ずかしくて日本に帰れない』という思いだけでした。でも、声をかけてもらったことは素直にうれしくて、WWEの許可を得てヒデオ・イタミとして両国に出ることができたんです。
久しぶりにNOAHのリングに上がった時、お客さんが僕をなんと呼んで応援していいか戸惑っているのが感じられたんですよ。『KENTA!』って言っていいのか、『ヒデオ!』と呼ぶべきなのか。振り返ってみると、あれがKENTAに戻るひとつのきっかけだったのかもしれないですね」
この丸藤戦の5カ月後、2019年1月いっぱいをもってWWEを退団。ヒデオ・イタミから再びKENTAへと戻った。