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スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
「前半は退屈だった…」ラグビー日本代表“12年ぶりウェールズ撃破”はなぜ起きた? 「相手の足が止まった」現地記者が見た“ラスト20分の異変”
posted2025/07/07 17:01

試合前、キャプテンのリーチ マイケル(左)と言葉をかわすエディー・ジョーンズHC
text by

生島淳Jun Ikushima
photograph by
Kiichi Matsumoto
どっちも、必死だった。
ウェールズは過去最悪のテストマッチ17連敗中。質実剛健、しかも創造性に富んだかつての王国だが、最後に勝ったのは2023年ワールドカップのジョージア戦だ(この試合は日本の最終戦となったアルゼンチン戦の前日、同じナントで行われていた。私はこの試合を取材しに行っていた)。
一方の日本。
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昨年、エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)の復帰初年度は、テストマッチで4勝7敗。ただし格上のチームには全敗で、内容に乏しかった。今回のウェールズ戦に連敗するようなことがあれば――進退問題に発展しかねない要素をはらんでいた。
両国とも、「不穏」な状態なのである。
日本とウェールズの精神状態は、試合開始前のアップに表れていた。
“ゆったり”していた日本の準備
ウェールズは、日本よりもだいぶ早めにピッチに出て、ガンガン体を当てていた。「この暑いのにご苦労なことだ……」とこちらが心配になるほどで、強度は7割から8割と思われた。一度、しっかりと心拍数を上げて試合に入ることを想定していた。
対する日本は、ゆったりしていた。
コンタクトは最小限、動きの確認といった感じで、強度は5割程度だっただろうか。酷暑のなか、慎重なアップである。
この動きをどう読み解くか。
ウェールズは、連敗中だからといってルーティーンを変えることをしなかった。これはマット・シェラット暫定ヘッドコーチの方針だろう。いつも通りのわれわれで行こう。そんな気持ちが感じられた。
一方の日本は、消耗を避けた。ナイーブかも……と感じないこともなかったが、結果を見れば賢い選択だったといえる。