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「前半は退屈だった…」ラグビー日本代表“12年ぶりウェールズ撃破”はなぜ起きた? 「相手の足が止まった」現地記者が見た“ラスト20分の異変”

posted2025/07/07 17:01

 
「前半は退屈だった…」ラグビー日本代表“12年ぶりウェールズ撃破”はなぜ起きた? 「相手の足が止まった」現地記者が見た“ラスト20分の異変”<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

試合前、キャプテンのリーチ マイケル(左)と言葉をかわすエディー・ジョーンズHC

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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Kiichi Matsumoto

不穏な空気を打破する勝利だった。ラグビー日本代表は欧州の雄、ウェールズを迎えてのテストマッチ2連戦の初戦に24-19で逆転勝利した。ウェールズを相手に奪った白星は、エディー・ジョーンズHC第一次政権だった2013年以来のこと。酷暑の中、難しいゲームを乗り切った要因とは? 【NumberWebレポート全2回の前編/後編に続く】

 どっちも、必死だった。

 ウェールズは過去最悪のテストマッチ17連敗中。質実剛健、しかも創造性に富んだかつての王国だが、最後に勝ったのは2023年ワールドカップのジョージア戦だ(この試合は日本の最終戦となったアルゼンチン戦の前日、同じナントで行われていた。私はこの試合を取材しに行っていた)。

 一方の日本。

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 昨年、エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)の復帰初年度は、テストマッチで4勝7敗。ただし格上のチームには全敗で、内容に乏しかった。今回のウェールズ戦に連敗するようなことがあれば――進退問題に発展しかねない要素をはらんでいた。

 両国とも、「不穏」な状態なのである。

 日本とウェールズの精神状態は、試合開始前のアップに表れていた。

“ゆったり”していた日本の準備

 ウェールズは、日本よりもだいぶ早めにピッチに出て、ガンガン体を当てていた。「この暑いのにご苦労なことだ……」とこちらが心配になるほどで、強度は7割から8割と思われた。一度、しっかりと心拍数を上げて試合に入ることを想定していた。

 対する日本は、ゆったりしていた。

 コンタクトは最小限、動きの確認といった感じで、強度は5割程度だっただろうか。酷暑のなか、慎重なアップである。

 この動きをどう読み解くか。

 ウェールズは、連敗中だからといってルーティーンを変えることをしなかった。これはマット・シェラット暫定ヘッドコーチの方針だろう。いつも通りのわれわれで行こう。そんな気持ちが感じられた。

 一方の日本は、消耗を避けた。ナイーブかも……と感じないこともなかったが、結果を見れば賢い選択だったといえる。

【次ページ】 「前半は退屈だった」

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#エディー・ジョーンズ
#リーチ マイケル

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