「松井は間違いなく巨人の監督になる」野村克也が語っていた“2人の本音評”…長嶋茂雄と松井秀喜をどう見ていたか？「思わず寒気がした」 

幻の「イチローvs松井」

　松井に凄みが増した90年代の終わりごろ、私はタイガースを率いていたが、ここでは左の遠山を松井攻略に起用した。これはかなり効果をあげた。松井を抑えたことで、遠山の選手寿命も伸びたことはうれしい余禄だった。

　もうひとつ、松井で忘れられないのは1996年のオールスターである。この年の第2戦、9回2死の場面でパ・リーグの仰木彬監督はイチローをマウンドに送った。打者は松井である。

　私はこの起用に猛烈に腹が立った。オールスターは真剣勝負の場である。イチローがどんなに速い球を投げるといっても野手である。その選手を、セ・リーグを代表する打者の松井にぶつけるとは。仮に松井がホームランを打ったとしても名誉にはならず、打てなければ打てないで恥になる。松井にとってもプラスになることはひとつもない。私は松井に代打を送ろうと考え、その前に本人の意向を聞いてみた。

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「いやだろ？」

　すると松井は「はい」と沈んだ声で答えた。それで私の心も決まった。代打に投手の高津（松井とは因縁がある）を送ることでこの場面を終わらせた。お祭りなのに堅苦しいと批判も受けたが、私は今でもあの決断は間違っていなかったと思う。そして、「面白いから対戦させてください」などと浮わついたことをいわなかった松井にも好感を持っている。

「松井監督」は誕生するか？

　松井は放出されたヤンキースのファンからもいまだに高い人気を保っているようだ。人格は申し分ない。どこかの、というよりジャイアンツの監督になるのは間違いないだろう。

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