草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
中日“幻の逆転弾”の全真相…NPBが受理しなかった抗議書には「有力な物証」が添付されていた「リクエスト問題の本質は審判の技量でなく…」
text by

小西斗真Toma Konishi
photograph byJIJI PRESS
posted2025/05/30 11:05

川越の打球をめぐる“疑惑の判定”に抗議する中日・井上監督
NPBに受理されなかった「有力な物証」
そこで審判団が、何と判定を覆した自分たちの非を認めてしまったのだ。翌日にパ・リーグ統括、審判長が謝罪する事態に発展したが、オリックスが求めた「当該プレーからの試合続行」が認められるはずはない。リクエストに限らず、審判の判定は最終かつ絶対なのだ。そもそも、当時の審判はのちのメディアへのインタビューで、再々検証に応じたことが誤りだったと語っている。納得させるためだったのだろうが、裏目に出たということだ。
今回の中日も翌日に抗議書を提出した。NPBには受理されなかったが、そこには「ホークアイ」の画像が添付されていた。打球の軌跡が点で表示されており、ポールの内側を通過したことが明示されていた。当該審判の肉眼、映像による検証をへても「ファウル」となった打球が、精密機械の目では「本塁打」だったという有力な物証である。
リクエスト制度「信頼回復」の道は…
翌日の試合前に審判長が神宮球場を訪れ、井上監督に説明したことから、NPB側の苦しい胸の内は察せられる。しかし、川越の本塁打が認定されることも、中日の敗戦が取り消されることもない。ではあるが、今後のリクエスト制度の進化のために、全本拠地に設置されている「ホークアイ」の活用は提案できる。今回のようなポール際の打球や外野のライン際のフェア、ファウルなどの判定には有効なはずだ。
審判は生身の人間だ。そしてその判定は未来永劫、最終である。だがその前に、「だろう」「たぶん」では判定が維持される「stands」ではなく「is confirmed(確認された)」を増やすのが、導入から8年を迎えるシステムへの信頼度回復の近道である。

