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プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「身長2m超、パキスタン出身」NPB球団スカウトも注目…佐賀アジアドリームズのエース候補とは何者か?「佐々木朗希のピッチングを研究しています」
text by

鷲田康Yasushi Washida
photograph byYasushi Washida
posted2025/05/25 17:41

NPB球団も密かに視察しているという佐賀アジアドリームズのエース候補ムシャラフ・カーン投手(左)
そのポテンシャルの高さを語るのはロッテで自らも投手だった香月良仁監督だった。
「かなり可能性を秘めた選手だと思います。はっきり言ってまだまだ体の使い方とか、フォーム的にも改善しなければならないところはいっぱいあります。ただ、そういう未完成な状態で、140kmを超える真っ直ぐを投げられている。そういう部分が改善されていけば、球速は上がっていくと思いますし、自分の経験的に言っても150kmを超える能力は確実に秘めている素材ですね」
実はすでに噂を聞きつけたオリックスのスカウトが視察に訪れるなどNPBの球団も注目し始めている。
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ただ、もちろん現実はそう甘くはないのも確かだった。
クリケットをしていたマイナス面とは…
5月17日、北九州下関フェニックス戦に先発したムシャラフは、4回3分の2を投げて4つの三振を奪ったものの7安打、5四死球で5点を失いノックアウト。制球も甘く、ストライクをとりにいったところを痛打されるという苦しい内容だった。
「クリケットをしていたマイナス面というのはありますよね」
こう語るのは野中ヘッドコーチだ。
「クリケットって助走をつけてその勢いで肘を伸ばして、前に倒れ込みながら投げるんです。その癖があるから右足にしっかり溜めることができないで、前に行ってしまう。肘の故障も多い。中東や南アジアの選手って民族的に背筋が太いので、上半身だけで速い球が投げられるんです。それで錯覚を起こして肘が使えないので、故障を起こしやすい」
実は以前にもパキスタンに150kmを投げる投手がいた。その後、韓国プロ野球の三星ライオンズにテスト生として入団したが、結局、フォームを修正できないままに退団しているという。
「ムシャラフの場合も五分五分だと思います。ただ彼はまだ若い。これからそういうフォームの修正とか、様々な変化に彼が耐えられるかでしょう」
野中は厳しい視線を送る。
「ローキ・ササキを見て研究しています」
来日1年目。日本語はほぼ話すことはできない。それでもノックアウトされた翌日には「昨日のピッチングが不甲斐なかったから」と連投志願をするなど、最も成長への意欲が強いのはムシャラフ本人なのである。