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「自分の野球観がぶっ壊れるんです」日本ハム・新庄剛志監督が松本剛に伝授した“ハイレベルすぎる助言”「バッターが打つ前に動けたら強いよね」 

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酒井俊作

酒井俊作Shunsaku Sakai

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photograph bySANKEI SHIMUBUN

posted2025/04/19 11:13

「自分の野球観がぶっ壊れるんです」日本ハム・新庄剛志監督が松本剛に伝授した“ハイレベルすぎる助言”「バッターが打つ前に動けたら強いよね」<Number Web> photograph by SANKEI SHIMUBUN

ホーム最終戦セレモニーで笑顔をみせる新庄剛志監督と選手会長の松本剛

 新庄はセンターの定位置で野球観を育んでいった。タイガース時代の92年に内野から外野にコンバートされて以来、強肩とダイビングキャッチで魅了し、ゴールデングラブ賞を10度受賞する名手として鳴らした。

新庄からの問いかけ「センターから見てどう?」

 いま、かつて新庄が君臨してきたポジションでレギュラーを張るのが松本剛である。

 彼はだれよりも新庄の理論派としての顔を知る選手だろう。選手会長として監督と話す機会はほかの選手と比べれば多く、新庄からよく尋ねられるのはチームのことだという。

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 だが、投手の状態などを聞かれたときはさすがに意外な思いがした。

「センターから見ていてどう? ボールとか、フォームとか、どう見えてる?」

 松本剛は帝京高でショートとして名を馳せてプロ入りしたが、一軍での出場機会が増えた17年以降は外野手に専念。センターを中心に守るのは新庄体制になってからである。経験を重ねるうちに新庄になにを訊かれているのか、その意図がわかるようになっていた。

「センターはピッチャーが投げてからバッターが打つまでの全部が見えるので、その日のピッチャーの状態が一番わかる野手のポジションだと思っています。その日のピッチャーの球威を見て、バッターがどういう反応をしているかもわかります。レフトやライトを守っていたときには、そこまではわかりませんでした」

 新庄はいま、監督として松本剛の目を通してセンターからの光景を見ている。

 そのようにして信頼を寄せる主力選手の意見を用兵や采配に生かしているのだ。

新庄からのアドバイスとは…

 松本剛にとっても30代に入り、野球人としての幅が広がった手ごたえがある。それは新庄からさまざまなヒントを授かった影響が大きい。

 特に外野手の醍醐味を感じているのはポジショニングだという。

 松本剛はあるとき、新庄から、こうアドバイスされた。

「自信をもってこっちだと思ったら、ポジショニングで大胆に動いていいからね。その代わり、レフトとライトの両サイドの選手も動かすようにしなさい」

 右か、左か。前か、後ろか。外野手は投手と打者の力関係を天秤にかけ、配球やカウント、スイングの角度などから打球方向を予測して守備位置を決める。松本剛は極端に動く場合、ほんの2、3歩ではなく、7m近く定位置から移動する。たとえばセンターが左に5mほど動く場合は両翼にも左に5mほど動くよう指示を出す。外野手3人が連係して守備網を敷くのだ。これはセンター新庄が取り組んできたポジショニングである。ファイターズ時代も司令塔としてレフトの森本稀哲、ライトの稲葉篤紀を動かし、札幌ドームの広い外野を支配した。新庄に学ぶ松本剛は実践するほど責任感が増していった。

「大胆にポジショニングする場合、僕にも根拠がないとできません。その予測が当たることがあれば、当たらないこともあります。でも、今日のピッチャーはこういう球が多い、このカウントだったらこうなりそうだと判断して動けるようになってきています」

ハイレベルな助言の内容

 松本剛は新庄から、さらにハイレベルな助言も得ている。

【次ページ】 ハイレベルな助言の内容

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