「お前、元々左打ちじゃないだろ」落合博満と会話した記憶は“2つだけ”でも…一軍の壁に苦しむ21歳の野球人生を変えた“オレ流監督の眼力” 

　外野手は野球人生で初めてとなったが「内野手よりも送球は大まかなコントロールで許されるので、内野と比べれば守備力が目立たないと考えました。もちろん、外野手ならではの難しさもありますが」と振り返る。

　守備の不安や負担が軽減された鉄平は打撃で存在感を見せ、二軍では主力選手となった。だが、一軍で出場するには高すぎる壁が立ちはだかっていた。

　当時の中日外野陣には付け入るスキがなかったのだ。強肩強打の福留孝介とアレックス・オチョアが中軸に座り、現中日監督の井上一樹や関川浩一、大西崇之や森野将彦と打力のある選手がそろっていた。そして、圧倒的な守備力を誇る英智も控える。

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　鉄平が当時を回想する。

「あの時は打撃、守備、走塁どれを取っても一軍にいた外野手に勝てる要素がありませんでした。勝てるのは若さだけでしたね。一軍の主力選手が年齢的にパフォーマンスの落ちてきた時に自分が入れるように力をつけることがモチベーションでした。チャンスをつかむ準備を二軍でしていた感じです。前向きなのか、後ろ向きなのか分からないですよね」

ティー打撃をしていると、落合監督がつぶやいた

　そのチャンスが訪れたのはプロ4年目、21歳で迎えた2004年だった。指揮官が落合博満監督に交代し、風向きが変わった。二軍で安定した打率を残し、1試合2本塁打を放った直後に一軍から初めて声がかかった。

　二軍を主戦としている若手選手にとって、現役時代に唯一無二の三冠王3回を獲得するなど、“オレ流”として確固たる実績を築いた落合監督は簡単に話しかけられる存在ではない。鉄平には中日時代、指揮官と交わした会話の記憶は2つに限られる。そのうちの1つは、一軍に上がったばかりのタイミングで偶然訪れた。

　試合前に鉄平がティー打撃をしていると、落合監督が後ろを通りがかり、一言つぶやいた。

「お前は元々、左打ちではないだろう」

〈つづく〉

#2に続く

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