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壮絶ダブルKOにファン熱狂「あの日のヤングライオン」辻陽太とゲイブ・キッドが“新日本プロレスの中心”になるまで「昭和の名勝負数え唄のように…」
text by

原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2025/02/21 17:22

ゲイブ・キッドのO-KNEEと辻陽太のジーンブラスターが交錯した瞬間。2月11日、エディオンアリーナ大阪
野毛道場とLA道場。ある意味、日米の道場生対決だ。ゲイブは英国人だが、日米両方の新日本プロレス道場のスピリットが宿っている。
大阪のセミファイナルが始まる時、前にいた若い客が「これが見たかったんだ」と嬉しそうに隣の友人に話しかけていた。
1月6日、大田区総合体育館でゲイブは辻への挑戦をアピールした。それに辻は「さっさと時代を作っちまおうぜ、オレとオマエでな。そう、このベルトを使って」と応じた。
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時代が変わったとはいえ、「闘魂」は新日本プロレスの根底にある。LA道場の壁にはアントニオ猪木の「道」の詩の英語版があった。ストロングスタイルという名のプロレスは様々なものを含んでいる。まず、強さがあり、希望があり、そして夢。そこには憧れを抱かせるに十分なものが必要だ。だが、時には怒りや狂気さえ孕んでいるのも事実だ。
息もつかせぬ激闘の結末はダブル・ノックアウト
二人は組み合った。
ボディスラム、張り手。場外でのエクスプロイダー、キック、ラリアット、投げ技の応酬にタックル。
辻はダウンしているゲイブに、「立ってこい。見せてやろうぜ、オレたちの時代を!」と叫ぶ。ゲイブが立ち上がって、「誰が最高か。オレだ!」と叫ぶ。
辻のスピアタックルを受け止めたゲイブは、これをパイルドライバーで投げ捨てた。ヒザ。コブラツイスト。頭突き。踏みつけ。パワーボム。振り回すようなラリアット。
辻のスピアタックル、ジーンブラスターがゲイブを浮かした。ダウン。だが、ダブルダウンだ。二人とも10カウントで立ち上がれなかった。21分24秒、ダブル・ノックアウトという結末。やっとヒザをついて、頭を突き合わせる両雄。
でも、壮絶なハッピーエンドにはならなかった。EVILや成田蓮らがリングを占拠して、辻もゲイブもやられてしまった。