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壮絶ダブルKOにファン熱狂「あの日のヤングライオン」辻陽太とゲイブ・キッドが“新日本プロレスの中心”になるまで「昭和の名勝負数え唄のように…」
text by

原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2025/02/21 17:22

ゲイブ・キッドのO-KNEEと辻陽太のジーンブラスターが交錯した瞬間。2月11日、エディオンアリーナ大阪
その日の第1試合が「辻陽太vs.ゲイブリエル・キッド」だった。二人ともまさしくヤングライオンで黒のショートタイツだった。久しぶりの試合に二人は燃えていた。辻はスピアタックルからのボストンクラブでゲイブに勝った。記録には「8分43秒、逆エビ固め」とある。
当時、ゲイブはこう話していた。
「はっきり言って今日の結果は悔しい。再開試合で負けるのは誰にとっても悔しいだろう。今日に向けて必死で準備してきたけれど、辻を超えることはできなかった。でもオレは諦めない。この結果を未来の自分の糧にしてやる。まっすぐ道場に戻って、次に向けて対策を考えるだけだ」
「さっさと時代を作っちまおうぜ、オレとオマエで」
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時は過ぎた。無観客の第1試合を戦っていた男たちは、大阪の満員の会場でセミファイナルのタイトルマッチに臨んだ。二人はファンに支持されている。
「ライオンマークがすべてだ。この団体で誰よりも辻と試合がしたいと思っている。あの時から多くのことが変わった。オレ自身も24キロ体重が重くなったし。そして、これまでの間にいろいろなことを経験した」(ゲイブ)
試合前日の会見で二人はそれぞれに思いを語っていた。
「なぜオレたちがこんなに胸を張って『新日本プロレスの中心なんだ』『オレたちの時代なんだ』と言っているのかを証明できる試合をしたい。ゲイブは体重が24キロ増えて、さらに荒々しくなって帰ってきたわけですけど、自分もイギリスに行って、そしてメキシコに行っていろんなスタイルを学んできました。でも、この新日本プロレスで、道場で一から学んだファイティングスピリット、その根源は変わっていないと信じています。どんなに見栄えが変わってもオレたちには譲れないものがある。オレにとってのプロレス愛は、非日常であり、夢であり、そして希望です」(辻)
ゲイブもどんなに荒々しくなっても辻にはリスペクトがある。
「日本の地方で共に夜を過ごし、トレーニングやバス移動など、長い時間を辻とは過ごしてきた。だから、辻とは特別な絆が生まれている。でも、パッションやエネルギーに関しては、コイツはオレのレベルに達していないと思う。だけどオレのレベルに近いものは持っていると思う」(ゲイブ)