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「目標を見失ってしまったんです」あの“春高ヒロイン”が23歳で電撃引退した真相…二見梓が今明かすビーチバレー転向「今度こそやり切った、と」
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吉田亜衣Ai Yoshida
photograph byL)Kazuaki Matsunaga、R)Takuya Sugiyama
posted2025/02/05 11:01

バレーボールを引退後、ビーチ転向で東京五輪を目指した二見梓さん
「あの試合は鮮明に覚えています。それこそ、どうやって1点を取ったかとか。大会を通して、私もアキさんもすごく調子がよかったんですよ。勝てる自信はありました。けれど、決め球として放ったショットをフェイクレシーブ(ブロックにつくふりをして下がってレシーブするプレー)で相手に拾われて、『決まった!』と思ったプレーで取られた1点を引きずって。ちょっとのミスと、ちょっとの気の緩みからコロッと形勢が変わってしまった。一瞬の隙をつかれて本当に悔しい思いをしました」
二見は記者会見で大粒の涙を流し、声を震わせた。これは「私のすべての力だった」と。
「はい。本当に代表決定戦に向かってアキさん、監督、コーチ、トレーナー、そして復帰を後押ししてくれた東レエンジニアリング、アキさんの所属のNTTコムウェアさん、皆で一致団結していい準備をして臨みましたから。そんな中で発揮した力が自分たちのすべてで、そのときの結果は実力以上の何ものでもないと思いました」
二見梓は、ビーチで完全燃焼した
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このときの活躍が評価され、長谷川/二見組はアジア大陸予選の日本代表に選抜され国対抗戦に挑んだ。決勝戦で中国に敗れ、目標に掲げていた東京オリンピックへの切符は手にできなかった。
その後、2021年9月、ビーチバレー選手として現役引退を発表。バレーボール時代はコートに未練を残してきたと話していたが、このとき心残りはなかったのだろうか。
「バレーボールを辞めたときに比べ、年齢、経験を重ねてきたこともありますが、パートナーのアキさんと家族よりもずっと一緒にいて、オリンピックという明確な目標に向かっていろいろなことにトライできた。あの手この手を尽くして全力でやってきたので、今度こそやり切ったという気持ちがありました」
同年開催された東京オリンピックも、一点の曇りなく澄み切った気持ちで観戦したという。二見のバレーボールへの情熱は、ビーチで完全燃焼した。《インタビュー最終回に続く》
(撮影=杉山拓也)
