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玉井陸斗にかけてもらった五輪メダル…亡くなった“飛込界のレジェンド”馬淵かの子さん、記者が目撃した情熱「80代でもプールサイドに…」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKYODO
posted2025/01/12 11:03
パリ五輪で銀メダルを獲得した玉井陸斗と馬淵かの子さん
教えているうちに、より完成度を求めるメンタルを合わせ持っていることも知り、なおさら期待はふくらんだ。
そして長年の夢を玉井がかなえたのは2024年8月のこと。パリ五輪10m高飛込で銀メダルを獲得したのだ。飛込では男女を通じて日本人初のメダルであった。1964年の東京五輪からちょうど60年、馬淵かの子が追い求めてきたメダルでもあった。
帰国したあと、玉井は馬淵かの子のもとを訪れ、メダルをかけてあげたという。メダルを見せることができたことも含め、最大の恩返しであり感謝であっただろう。
「かの子先生がいなければ…」
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同じく教え子であり、オリンピック6大会出場のレジェンド、寺内はSNSにこうつづっている。
「かの子先生がいなければ自分の飛込人生はありませんでした。0歳の時のベビースイミングから知ってくれている偉大な大先輩。長い間ありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。」
飛込は、正直、ふだんは多くの注目を集めることがない競技だ。それは経済面も含めた競技環境とも密接につながっている。
その中にあって、選手として、指導者として、内なる夢を純に追い求め、限りない情熱を選手の育成に注いだ。80代までプールサイドにいたように、情熱は衰えることがなかった。数々の選手を育て上げ、日本飛込の歴史を築いてきた。
玉井のメダルは、その足跡に対する勲章でもあった。