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引退まで「1250本のラケットを一本も折らなかった」ラファエル・ナダル38歳の四大大会22勝より大切なこととは…「小さな村の良き人間として」
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2024/11/28 11:03
デビスカップ、スペイン対オランダ戦で最後の雄姿を見せたナダル。引退の舞台に団体戦を選んだのには彼らしい理由があった
テニスは、長いときは5時間も、たった一人で戦わなければならない孤独な競技だ。最近でこそ試合中に陣営からのコーチングがある程度許されるようになったが、以前はそれすらルールで禁じられていた。
デ杯は特別なもの
「デビスカップはツアーの日常とは違う特別なものだった。いくつかの世代を越えて戦ってきたけど、僕たちの国の成功は家族のような関係性の賜物だと思う。僕はその雰囲気が好きだったし、すばらしい仲間たちを持つことができた」
そう語るナダルが、幸せな幕引きのための場所に、2019年の優勝以来遠ざかっていたデビスカップを選んだことは不思議ではない。
スペインの準々決勝の相手はオランダ。「これが僕にとって最後の大会だということは一切考慮しないで、チームにとってベストの選手を選んでほしい」とナダルは監督のダビド・フェレールに何度も伝えていたというが、昨年からチームを率いる元世界3位のフェレール監督は、3カ月間試合をしていないナダルをシングルスに起用した。
「僕が監督なら、僕を使わない」
相手は世界ランキング80位の29歳ボティック・ファンデザンツフープ。2年前に全仏オープンとウィンブルドンで続けて対戦し、ナダルは2試合ともストレート勝ちしたが、重い2年の月日が力関係を変えた。4-6 4-6のストレートセット負け。ナダルの後継者カルロス・アルカラスはエース対決に勝利したもののダブルスに敗れ、多くのファンが思い描いていた夢のシナリオはあっけなく砕け散った。
「もし今日チームが勝っていたとして、もし僕が監督なら、準決勝では僕を使わない」
寂しげな笑みのナダルの言葉が、ラストマッチの出来を物語る全てだった。しかし、人々の目に映っていたのはそんな現実ではなく、この1試合のためにナダルが捧げてきた献身だったに違いない。