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「350km/hの男になる」小椋藍がMotoGP初ライドで見せた潜在能力と、やっぱり気になる真っ赤なアイツとは
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2024/11/22 17:00
注目のMotoGP初ライドでタイムこそ伸びなかったものの、参加ライダー中最多周回を記録するなど精力的にテストを行った小椋
事前のミーティングで決まっていたのは、午前10時から午後5時までの7時間で予定周回数100周ということ。午前中に軽い転倒をしたことで予定周回数にはわずかにとどかなかったが、6周から10周前後のスティントを繰り返して86周を走った。なんでも1番というのは記録に残るものだが、「初テストで最多周回数」はMotoGPマシンに慣れるという初テストの目標を達成した証といえる。
初テストから2日後、バルセロナ市内で食事をしながら小椋の話を聞いた。印象深かったのは、彼のこんな言葉だった。
「Moto3、Moto2では、絶対に負けないといえるライダーがいたけど、MotoGPクラスには当然だけど、ひとりもいなかったですね。みんなタイトルを獲得してるライダーばかりだし、速かった。今回のテストでこれといった目標はなかったけど、トップから2秒差というのは、正直、ちょっと残念でしたね。もっと行けるんじゃないかと思っていたし……」
来季のMotoGPルーキーは3人。ドゥカティのフェルミン・アルデゲルは小椋より0.382秒速い20番手。ホンダのソムキアット・チャントラは小椋から0.349秒遅れて23番手だった。タイム的にはほぼ同じで3人とも初転倒を経験したが、1分40秒946のベストタイムに匹敵するタイムで連続ラップを刻む小椋の走りは、これまで同様着実にレベルを上げていくもので印象に残った。
350km/hの男たち
テスト前にカタルーニャ・サーキットでのMotoGPの最高速を350km/hと教えたとき、「おお、350km/hの男になるんですね」と笑っていた小椋は、「350km/hの男たちの中で1番印象に残ったライダーはだれ?」という質問に「カラーリングが真っ赤っ赤だったマルケスですね」と答えた。
24年シーズンにホンダからドゥカティのサテライトチーム「グレッシーニ」に移籍して総合3位と復活したマルク・マルケスは、25年シーズンはドゥカティのワークスチームで走るチャンピオン候補の本命だ。常に周囲の度肝を抜いてきた走りに、小椋は「(なんであんな走りができるんだと)腹が立つ」と語っていたが、そのマルケスと同じクラスで戦うことになる。