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「群を抜く存在になった」“世界戦3連続KO”中谷潤人の次の相手は? 元世界王者・飯田覚士が語る井上尚弥との“決定的な違い”「まだ機は熟していない」
posted2024/10/19 17:25
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
WBC世界バンタム級王者の中谷潤人が、挑戦者ペッチ・ソー・チットパッタナ(タイ)を6回TKOでくだし2度目の防衛に成功した。ダウン経験がなく76勝(53KO)1敗というキャリアを誇る難敵から2度のダウンを奪う圧巻の内容。WOWOW「エキサイトマッチ」の解説を務めるなど海外のボクシングにも精通する元WBA世界スーパーフライ級王者・飯田覚士氏が、中谷の圧倒的な強さ、そして井上尚弥との共通点・違いについて分析した。<全2回の後編/前編も公開中>
「この選手はやっぱり怖いなって」
6ラウンドのちょうどハーフタイム、バゴッ!という打撃音が鳴り響いた。
中谷潤人があまりに強烈すぎる左オーバーハンドをカウンターで顔面に打ち込む。それでも表情を変えない1位挑戦者ペッチ・ソー・チットパッタナに連打を浴びせ、ここまで77戦して1度もダウン経験のない相手をキャンバスに横たわらせる。昨年5月にアンドリュー・モロニーを1発で沈めた必殺ショットを起点としたダウンシーンよりも、飯田覚士を驚かせたのはペッチの「その後」であった。
「中谷選手も“決まった”と思ったはず。パンチを当てた後、倒れるくらいの感触があったからバックスステップで2、3歩引いたくらい。それが倒れていないから、距離を詰めてラッシュしてダウンを奪いました。でも立ってからのペッチ選手が凄まじかった。動じることなく、気合いを入れ直したかのようにパワーを乗せたパンチで中谷選手と果敢に打ち合っていきましたよね。普通のボクサーなら到底、無理。この選手はやっぱり怖いなって思いました。頑丈で、気持ちも強くて。判定までいってもおかしくないなって思っていたら、その想定をまた中谷選手が超えていくわけです」
両者はリング中央で打ち合い、ペッチのパンチにも力と魂が宿る。残り15秒のタイミングだった。中谷はワンツーを浴びせた後に左アッパーでペッチの体を起こしてから右フック、左ショートを見舞う。相手の動きが鈍り、残り10秒を告げる拍子木が鳴ると、伸びのあるワンツーを顔面に突き刺して試合を終わらせた。不気味さを漂わせていた挑戦者を、きっちりと仕留め切ったのだった。
圧巻のKO劇ーー次戦の相手は?
「ああいうふうにフルスイングしたパンチでも起き上がってきたペッチ選手が立ち向かってきたら多少なりともひるむとか、ちょっと様子を見るとかでもおかしくない。でも中谷選手はまったく動じなかった。同じように攻め続けて、フィニッシュまで持っていくことができる。この点は井上尚弥選手とも共通する部分。(日本人選手で独占している)バンタム級のチャンピオンのなかで頭一つ抜けていましたけど、この勝ちっぷりによって群を抜く存在になったと言えるでしょうね」