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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「1ラウンドから釘付けになりました」元世界王者・飯田覚士が驚いた中谷潤人の変化とは…「わずかな集中の隙にパンチを放っていく感じ」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/10/19 17:24
タイの難敵ペッチ・ソー・チットパッタナに圧巻の内容で6回TKO勝利をおさめた中谷潤人。元世界王者の飯田覚士がその強さの秘密に迫った
腰が立っているというわけではない。言わば自然体。腰の据わりを維持させたままで、下半身のパワーを拳に伝えていく。ビシッという音を奏でるそのジャブの威力は、下半身を存分に強化していることをうかがわせた。
構えもさることながら、飯田は駆け引きの妙にも着目する。いくら下半身を鍛えようが、構えを変えようが、距離をつかんでパンチをしっかり当てなければ意味がない。
「相手を掌握しているんですよね。呼吸を読むみたいなところも凄くうまくなっているなと感じました。1ラウンドに当てたジャブがまさにそう。ペッチ選手からすると“えっ、今なの”みたいなタイミングだったんじゃないか、と。スピードがあるのはもちろんなんですが、息を吐いた瞬間とかほんのわずかな集中の間の隙にパンチを放っていく感じが目につきました」
対するペッチはこのままじゃ行き詰まると捉えたのか2ラウンドに入ると前に出ていく。しかし打開とはまったくならず、リングジェネラルシップが王者にあることは変わらない。
「ペッチ選手としてはジャブの差し合いで相手を上回れない以上、距離を詰めて乱打戦に持ち込みたいと考えたはず。中谷選手のカウンターを警戒して入るタイミングも慎重でしたが、それでもチャンピオンはカウンターを当ててくるわけです」
公開採点で大きくリードも迎撃態勢へ
2ラウンドにはスリップとなったが左のオーバーハンドをカウンターで発動している。1ラウンドにジャブを制し、2ラウンドにカウンターを見せつけて、攻め手を何とか探ろうとするペッチを混乱させる。
3ラウンドになると今度はアッパー、ジャブカウンター、フックと多彩な右を多めに繰り出す。離れてよし、近づいてよし。王者の攻め手は時間の経過とともに増えていく感じがした。