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核心にシュートを!BACK NUMBER
三笘薫の“テレビに映らないプロ意識”「開始8分で水を」「スパイクに芝生や土1つすら…」酷暑の日本代表戦で記者が目撃「負担を考えてです」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJFA/AFLO
posted2024/09/15 17:04
日本代表9月シリーズで圧巻の突破力と決定力を見せた三笘薫。そのプレーの土台には、圧倒的な準備する力にある
三笘はペットボトルを口に運ぶのではなく、逆さに向けて首の後ろにかけると、すぐに走っていった。暑熱対策のためだった。
この日は36.7度という高温もさることながら、より厳しかったのは前日との気温差だった。記者席で測ったデータを見ると、前日の同時刻よりも6度ほど高かった。
鈴木彩艶が感嘆した“三笘の知識と心配り”
その中で三笘がペットボトルを手にしたのは、チーム一番乗りで水を飲むためではない。コントロールできないことに対応するためだった。
思い出されたシーンがいくつかある。
1つは、バーレーン戦前日練習。スタジアムで行なわれた公式練習を前に、三笘は4番目にピッチに出てきた。前の3選手と違ったのは、彼だけは水の入ったペットボトルを持って出てきたことだ。もう1つが、中国戦の試合後だ。代表戦では選手たちはスタンドを一蹴してファンに挨拶をして回るのだが、そのときも三笘の左にはいつでも給水できるようにとペットボトルが握られていた。
暑さは自分でコントロールできない。だから、キックオフから10分も経たないうちに首の後ろに水をかけて体を冷やそうとした。
一方、給水のタイミングは自分でコントロールできる。三笘であれば、キックオフ時間から逆算して、試合前に十分な水分補給は行っていたはずだ。
なお、口に含むものに関する三笘の知識と心配りは代表チームでも突出しているという。21歳ながら栄養士をつけて普段から栄養管理に余念のない鈴木彩艶でさえも、昨オフのTBSの密着番組のなかでこう証言している。
「(三笘は)知識がすごいのでみんな、(ある食材を口にすべきか悩んだら)彼に聞いて『OK』が出たら『大丈夫だ!』となるくらいです」
取材エリアに来た三笘が持っていたスパイクは…
もう1つ、三笘の体と対話する際の繊細な感覚を表わすエピソードがある。
試合後、取材エリアに来たとき、彼は直前まで使用していたスパイクを手で持っていた。
取材に答える間、スパイクを柔らかくしたいのか、スパイクの踵とつま先の部分を持って曲げる動きを繰り返していた。テレビで見ていたら分からないかもしれないが、普段と同じ紫色のスパイクながら、普段とは足裏の部分が異なっていた。
スパイクには、大きく分けると3つのタイプがある。地面をグリップする足裏部分の突起の先端に金属がついている「取り替え式」と、ついていない「固定式」。そしてその両方が入っている「ミックス式」だ。
地面の硬い日本でプレーしている選手の多くは固定式を使っている。一方、(南欧をのぞく)ヨーロッパでプレーする選手の大半は柔らかく、泥のような土質が多いこともあり、ミックス式を使う。
固定式は足への負担が少ないというメリットがある。ただグリップ力が弱いため、ヨーロッパのような地盤の緩いピッチ上では足を滑らせてしまうことがある。だから、欧州組の多くの選手が取り替え式やミックス式を履く。
三笘もそうだ。