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パリ五輪“金メダル有力候補”が「世界的ボクシングカメラマンに憧れた」高校時代…「弟子にしてください!」岡澤セオンの“アツすぎるメール”秘話
posted2024/07/27 11:01
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Naoki Fukuda
パリ五輪のボクシング71kg級に出場する岡澤セオン(INSPA)は個性的なアスリートだ。ボクシング界の現状を変えようと奮闘し、多くのスポンサーを集めたことはよく知られているが、それだけではない。高校時代にボクサーではなく、ボクシングカメラマンを志したというエピソードもなかなかにユニークである。パリで金メダルを期待される岡澤と、世界的なボクシングカメラマン・福田直樹のボクシングを通じた交流秘話を紹介する。(全2回の1回目/後編へ)
岡澤セオンが衝撃を受けた“世界一のカメラマン”
もう11年前の話になる。日大山形高校ボクシング部3年生の岡澤セオンは、あるテレビ番組に衝撃を受けた。WOWOWで放送された『ノンフィクションW パンチを予見する男~ボクシングカメラマン福田直樹~』だ。
福田は2001年に渡米、ボクシングの聖地と言われるラスベガスに本拠を構え、ボクシングのカメラマンとして身を立てようとした。カメラの技術を本格的に学んだこともなければ、英語もできなった。当時の年齢は36歳。ほとんどの人から「無謀」と言われた。
それでも福田は筋金入りのボクシングマニアとして、そして専門誌の編集者として蓄えてきたボクシングの知識と経験を総動員し、時に人種的偏見とも戦いながら、10年の歳月を経て名カメラマンの地位をつかんだ。全米ボクシング記者協会の最優秀写真賞を4度受賞する「世界ナンバーワンのボクシングカメラマン」になったのである。
番組はそんな福田を追いかけたノンフィクションだった。福田のカメラマンとしての最大の武器は、パンチが当たる決定的瞬間をとらえる技術だ。「当たった!」と思った瞬間にシャッターを切ったのではもちろん遅い。福田の流儀は選手の攻撃パターンや得意なパンチをインプットし、構える姿勢や立ち位置、打ち出しの動きから「パンチを予見」することだ。番組はそんな福田の技術、ボクシング写真にかける思いを、親友である俳優の香川照之や著名ボクサーの証言を交えて構成していた。