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“飛びすぎる金属バット問題”は中村奨成「清原和博超え6HR」の10年以上前から深刻だった…“日米の開発対立”舞台ウラを高野連が明かす 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2024/04/06 17:01

“飛びすぎる金属バット問題”は中村奨成「清原和博超え6HR」の10年以上前から深刻だった…“日米の開発対立”舞台ウラを高野連が明かす<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

2017年夏の甲子園で清原和博の持つ1大会本塁打数を更新した広陵・中村奨成

 日本で「球数制限」が問題提起された2019年10月、大阪大学で日本野球科学研究会(現日本野球学会)主催による「野球科学国際特別セミナー」が行われ、ピッチスマートの制定に深くかかわったグレン・フライシグ博士(ASMI アメリカスポーツ医学研究所研究ディレクター)が講演した。

 怪我をしていないリトルリーグの投手410名に対し、2006~2010年の5年間、電話で聞き取り調査をするとともに、14~20歳の若い投手で、肘の手術をした選手(66人)、肩の手術をした選手(29人)、健康な選手(45人)にも聞き取り調査をした。

 またアメリカのMLB投手の出身地についても調査し、寒冷地出身の方が、温暖地出身の投手よりもトミー・ジョン手術(肘の側副じん帯再建手術)の実施率が低いことも解明した。また人種別にも調査を進めて、この中には日本人選手のデータも含まれている。こうした長期にわたる徹底した調査で「ピッチスマート」を決めた。

 金属バットの開発についても同じだった。

 NCAAの担当者は「長期的で広範な調査データと、綿密で大掛かりな物理実験を繰り返して規格を決めた」と語っていた。だから、データには絶対的な自信があり、日本側に妥協することはできなかったのだ。

 こうした大規模な研究が可能なのは、アメリカの野球を統括するMLBや大学スポーツを統括するNCAAが、大きな予算を持ち、野球界全体のために使うことができるから。専属の研究者もいて、徹底的な研究を行う体制ができている。

 プロ、アマ各団体が個別に存在している日本とは「体制」が全く違うのだ。

森友哉ら大阪桐蔭に中村…10年代の甲子園はどうだったか

 その状況の中で、2010年代の甲子園での本塁打数はどうなっていたか。

10年 春31試15本(0.48)/夏48試26本(0.54)
11年 春31試15本(0.48)/夏48試27本(0.56)
12年 春31試19本(0.61)/夏48試56本(1.17)
13年 春35試20本(0.57)/夏48試37本(0.77)
14年 春32試13本(0.41)/夏48試36本(0.75)
15年 春31試17本(0.55)/夏48試32本(0.67)
16年 春31試16本(0.52)/夏48試37本(0.77)
17年 春33試23本(0.70)/夏48試68本(1.42)
18年 春35試20本(0.57)/夏55試51本(0.93)
19年 春31試19本(0.61)/夏48試48本(0.87)

 2010年以降、1試合当たりの本塁打数はほぼ横ばいだったが、2012年は、森友哉(現オリックス)、藤浪晋太郎(現メッツ)などを擁し春夏連覇を果たした大阪桐蔭が計8本塁打、光星学院の北條史也(元阪神)が4本塁打するなど史上2位の56本塁打。さらに2017年夏は準優勝した広陵の中村奨成(現広島)が大会新の6本塁打(以前の記録保持者はPL学園の清原和博)を記録するなど68本塁打となった。

高野連は再度の規格変更に乗り出すことに

 2000年から2009年まで、春の1試合当たりの本塁打数は0.44本(325試合142本)、夏は0.73本(488試合356本)だったが、2010年から2019年までは春は0.54本(321試合172本)、夏は0.86本(487試合418本)と明らかに増加した。

 看過できない事態となり、日本高野連は再度の規格変更――今回の新基準バット規定への流れである――に乗り出すことになる。

<つづきは第3回

#3に続く
「新基準バットは3万5000円と高価だが」記者の直撃に高野連「申し訳なく思いますが…」吉田輝星の“球数制限”がきっかけ、今後どうする?

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