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「もう誰も勝てない」ピーター・アーツが“20世紀最強の暴君”だったころ…カメラマンが見た“明るすぎる素顔”「ピーター、真面目にやってくれ」

posted2024/03/23 17:10

 
「もう誰も勝てない」ピーター・アーツが“20世紀最強の暴君”だったころ…カメラマンが見た“明るすぎる素顔”「ピーター、真面目にやってくれ」<Number Web> photograph by Susumu Nagao

“20世紀最強の暴君”と称された若き日のピーター・アーツ。スタジオ撮影の現場はいつも笑いが絶えなかった

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長尾迪

長尾迪Susumu Nagao

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Susumu Nagao

斧で大木を切り倒すかのような強烈すぎる蹴りを武器に、90年代から00年代にかけてキックボクシング界の頂点に君臨したピーター・アーツ。K-1黎明期からアーツを撮り続けたフォトグラファーの長尾迪氏が明かす、“20世紀最強の暴君”の知られざる素顔とは? 新たにアーツ本人から聞き出した証言も交えて、その偉大なキャリアを振り返る。(全2回の1回目/後編へ)

「あんな蹴りを受けたら誰だって失神する」

 映画『パルプ・フィクション』のテーマ曲として知られる「Misirlou」に合わせて、自らのルーツであるランバージャック(木こり)の衣装をまとった男が姿を現す。彼が入場するだけで、会場の雰囲気が一変する。全盛期のK-1ヘビー級を牽引した男の名は、ピーター・アーツ。その強さゆえに、”20世紀最強の暴君“と呼ばれた。

 同時期に活躍したK-1四天王の一人であるアーネスト・ホーストは、精密機器のような緻密で正確な動きとコンビネーション、テクニックを駆使して、グランプリを4度制した。この記録はセミー・シュルトと並ぶ最多記録である。

 一方、アーツの優勝経験は3回だが、準優勝も含めた6度のファイナル出場記録は破られていない。彼は192cm、105kgという恵まれた体格と長い手足、そして天賦の身体能力を持ち合わせていた。また、高い打点から突き上げる膝蹴り、至近距離でのパンチ、全てにおいてスピードとパワーがあった。

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 なかでも相手の首を刈るような豪快で重たいハイキックは、一撃必殺の破壊力と美しさで、見るものを魅了した。同じハイキックでもミルコ・クロコップのそれは鞭のようなしなりと切れ味が特徴だったのに対し、アーツは木こりが斧で大木を切り倒すがごとく、右足で大男たちをなぎ倒していった。

 アーツのハイキックはリングサイドで何度も撮影している。半円を描きながら高く上がる脚の軌道は華麗なのだが、ヒットしたときのドスンという衝撃音は生々しかった。「あんな蹴りを受けたら誰だって失神する」と思わせる説得力があった。

ピーター・アーツ21歳、初来日の記憶

 アーツのキックボクサーとしてのプロデビューは1987年3月。16歳のときに母国オランダで判定勝利を飾った。3戦目では後にライバルとなるホーストと対戦し、初黒星を喫している。初来日はまだ大学生だった21歳のときで、前田日明が主催するリングスに出場。肘打ちありのキックルールで、KO勝ちをした。

【次ページ】 「誰もアーツに勝てない…」KO率8割で怒涛の20連勝

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